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15枚目 ページ15

「何なりと」肩をすくめながら内海は答えた。「単刀直入にお伺いします。あちらで死んでいる方は何者ですか」その質問に内海の持っている正しい情報を伝えた。「ジェフリー・モーガン。アメリカ人。サンフランシスコで小さな貿易会社を経営している。本人はそう言っていました」

 真実をそのまま伝える事は内海にはどうも憚られる。「お知り合い、だったのですか」イギリス士官の言葉に「知り合い、という定義によりますね」眉間にしわを寄せて答えた。続いてことの成り行きを説明する。「彼とはさっきここで知り合いになって、一緒にクロスワードパズルを楽しんでいたのです。彼は、そう、なかなか良い腕をしていましたよ。その意味では知り合いと言えるでしょう。一方、自己紹介された以外、彼については何も知りません。その意味では知り合いとは言い難い」


 「するとあなたは、その程度のお知り合いのために、わざわざここで....…何と言うか、その……彼の死体の番をしていたか、ですか」詰まるように言葉を選びながらイギリス士官が言った。


 内海ははっきりそうですとでも言うように頷いて見せる「モーガン氏とは、先ほども言ったとおり、この場所で知り合いになり、一緒にクロスワードパズルを楽しんでいたのです。ところが、パズルを完成させる前に邪魔が入った。それが貴方たちです」


 「それは申し訳ないことをした。しかし、我々がパズルを邪魔したことと、モーガン氏が亡くなったことにどんな関係があるのですか」正論を突きつけるように早口で突き詰める。「それは私にもわかりません」内海は再び肩をすくめて見せる。「我々二人はそれぞれ席を立った。そして、戻ってみるとモーガン氏が椅子に座ったまま亡くなっていたのです」内海は言葉を切り、相手の顔をまっすぐに覗き見て先を続けた。


 「貴方たちのせいで、ただでさえ船上はすでに混乱を来していました。モーガン氏がどんな理由で亡くなったのかわかりません。ですがこの様な奇妙なタイミングで妙な死体が発見されれば更なる混乱を引き起こす可能性がある。この船にはご婦人方も多く乗っていらっしゃる。不要な騒ぎは好ましくない。そこで私はこの場に留まり、死体の番をしていた。そういうわけです」もっともらしいことを述べる内海をイギリス人士官は灰色の瞳でじっと眺めた。その表情からは、疑いの念がはっきりと読み取れた。

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作者名:カナリアナ | 作成日時:2019年3月28日 23時

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