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ここで返される返答は予想だにしないことがほとんどだ。「殺人、及び自決はスパイにとっては最悪の選択肢だ」結城中佐の言う最悪の選択とは何なのだろうか。「仰っている意味がわかりません」淡々と答えが告げられる。「平時に人が死ねば、必ずその国の警察が動き出す。考えるまでも無くスパイが敵を殺し、あるいは自決するなど無意味で、馬鹿げた行為でしかあるまい」
そんな結城中佐の言葉に反論する。「それは、死を恐れる卑怯な考えです。自分にはやはりスパイは卑怯な存在だとしか思えません」上官に意見しているにも関わらず、それに対する叱責はなかった。「それなら聞くが、貴様が自決してそれでどうなる」結城中佐の問いに佐久間は、死ねば、向こうで胸を張って同期に会えます。信じ教えられた事を堂々と告げる。「ほう。すると貴様は同期にあって自慢するために死ぬのかだが、もし会えなかったらどうする」周りの奴らの笑い声など聞こえなかった。「会えないはずがありません」力強く言う佐久間の言葉に結城中佐は続ける。「なるほど。三好、どう思う」話を振られた三好が答える。「トートロジー見事なイワシの頭です。よく仕込んだものですが、新興宗教と同じものですよ。閉鎖集団を離れてはとても長く持たない観念ですね」肩をすくめている。神永は一拍置いて答える。「三好と同意見です。例えば日本が戦争に負けた場合、たちまち全く反対のことを容易かつ同程度に演じるようになるでしょう」
心臓に杭を打たれた衝撃が佐久間を襲っい、驚きのあまり頭を殴られた感覚に陥った。日本が戦争に負けた場合だと。そんなはずは無い。日本が戦争で負けるなどと言う、そんな事があるはず無い。「金、名誉、国家への忠誠心、あるいは人の死にさえも全ては虚構だ。諸君の未来に待ち受けている真っ黒な孤独。その中で唯一諸君を支えてくれるのは常に変化し続ける多様な状況の中で咄嗟に判断をくだせ能力だけだ」結城中佐が学生らに背中を向け歩き出す。スパイとして信じられるものなど身につけた能力だけだ。その事実が皆にのしかかる。
結局、コイツらがスパイとして働くのは、名誉や愛国心の為ですらない。自分ならこの程度なら出来なければという恐ろしい程の自負心なのだ。すっかり冷めてしまった眠気と先程の後味の悪さを消し去り、気持ちを一転しようと冷水で顔を洗う。佐久間は目の前の彼らに卑下と少しの恐怖を覚えた。そんな風に生きていけるのは人でなしだけだ。そう思えた。
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カナリアナ(プロフ) - エルモさん:仲間ですね！！自己満足になってしまうんですが、小説も頑張っていこうと思います。読んでくれてありがとうございます！！ (2019年12月9日 21時) (
レス) id: ddfa994d58 (このIDを非表示/違反報告)
エルモ - ジョカゲ好きです！！ (2019年12月9日 20時) (レス) id: 9cee2cc714 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カナリアナ | 作成日時：2018年12月12日 21時
