7枚目 ページ7
常識を弁えているつもりの佐久間を浮いた存在だと決めつけられた様に目の前の光景に余計に頭が混乱する。「どうした」静かに棘を指す声が部屋に響き部屋は一瞬静まりを迎える。「いつものゲームですよ。ただ佐久間さんが納得できないと」神永の言葉が癪に触り佐久間は再び声を荒げる。「別に勝ち負けがどうこう言ってるんじゃないお前たちのやり方が卑怯だと言ってるだ」
結城中佐は佐久間には目もくれずに続ける。「勝負をするなら正々堂々と、か。ではこいつらが種明かしをしていなかったら果たして貴様は今と同じことを言っていたか」そう言われると佐久間は一瞬押し黙ってしまう。「それが今の日本の姿と言うことだ」部屋を後にしようとする結城中佐に対し佐久間は詰まり気味に聞き返す。「どういうことでしょうか」
踵を返すまでもなく、上半身のみを捻る。「ワシントンだ、テーブルの上を国際政治の舞台に置き変えてみろ。情報が筒抜けならゲームに勝てる訳がない。先年ワシントンで行われた軍縮会議の時も日本がそうであった様に。あの時テーブルについた他国のプレイヤーたちが日本が最大限何処まで譲歩するつもりがあるのか予め知っていたんだ。見せ掛けのルールに囚われていた日本は、実際行われていたゲームの本質にすら気づいていなかった」刹那、結城中佐の目が鋭く光る。「忘れるなここはスパイ養成学校だ。この連中はここを出たあと世界各地に散らばって自らを見えない存在としなければならない。十年、二十年あるいはもっと長く見知らぬ土地にたった一人で留まりその地に溶け込まなければならない。見えない存在となって、その国の情報を集め本国に送る仕事に従事することになる。それがどんな生活なのか貴様に想像できるか」
結城中佐の言葉に佐久間の表情が歪む。振り返って無言になる学生を一瞥し結城中佐は続けた。「諸君に未来に待っているのは真っ黒な孤独だ」視線は再び佐久間に向き直り問われる。「もし、貴様がスパイだったら敵に正体を暴かれたときはどうする」軍人の佐久間にとっての答えは一つしか無かった。「その時は敵を殺すか、さもなければその場で自決します」軍人として叩き込まれた事を当たり前に答えた。敵を目の前にして殺す以外の選択肢はない様に思われた。佐久間の答えに対し笑い声が部屋に染み込む。期間生は皆口を歪めて笑っている。佐久間は笑っている奴らを見て再び結城中佐に向き直す。
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カナリアナ(プロフ) - エルモさん:仲間ですね！！自己満足になってしまうんですが、小説も頑張っていこうと思います。読んでくれてありがとうございます！！ (2019年12月9日 21時) (
レス) id: ddfa994d58 (このIDを非表示/違反報告)
エルモ - ジョカゲ好きです！！ (2019年12月9日 20時) (レス) id: 9cee2cc714 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カナリアナ | 作成日時：2018年12月12日 21時
