39枚目 ページ39
あと、十分でAとの接触の時間になる。流石にもう一度、Aの方から間違ってこの部屋をノックするには考えられない。またパーティの会場内でのAとの直接的な接触も考えづらい。向こうに任務対象のターゲットがいた場合はこちらの存在に気がついてもAからの接触は出来ないだろう。人も少なく、尚かつ男女が二人きりであっても不自然ではないところ......。一つだけ思い当たる場所がある。他に当てもないし時間まで残り少ない。行かないよりは良い判断だろうと思い部屋を出た。
神永は一人デッキに向かった。そこに海風を感じ黄昏ている女を見つけた。後ろから「お嬢さん」と声をかける。「お一人ですか。それとも相手を待ってるだけ」神永の声を聞いてゆっくりと女が振り返る。「例えば、俺とか」そんな神永の口説き文句にも「そうね。この船が沈んじゃったら物語は最高のラブストーリーになって、きっと私は悲劇のヒロインでしょ。ちょうど一緒に沈んでくれるパートナーを探してたのよ」なんて軽口を叩いている。Aの腰を抱いて自分の部屋まで連れて行く。
薄づきの化粧品に華やかで上品なパーティドレス。部屋に入るとさっきまでの雰囲気から一転。女スパイの顔になる。どっちが本物の君なんだろう。廊下を歩く人の気配、隣の部屋にいる乗客、部屋の盗聴器の有無、素早く確認を済ませたAは俺の側にやってきた。パーティでは、ある男と接触する。男の名は、ジョシュア・メイソン。イギリスの実業家で貨物の運送会社社長。その男のイギリス本国での裏世界への繋がりは考え難く、とても熱心なキリスト信者であり良き隣人。特に目立った噂は聞かない。そんな奴にかかった容疑が阿片の売買。これがまた厄介で上海の憲兵隊が所有する保管庫からの阿片の密輸が疑われている。そのため日中関係が芳しくない日本から下手に動くことはできないという訳だ。そこでそれとなくジョシュアに接触して探る必要があるらしい。
「あれ、でもその件ってAが三好と一緒に行った夏のパーティで一段落したんじゃないのか」目を不思議そうに丸くして神永がことの経緯を聞いてくる。「そのはずなんだけど、また新たな手がかりが見つかった。プラスこれを渡してこいって事かな」そう言ってAは神永が必要であろうとある荷物を手渡した。パーティ用にしては大きめな鞄だとは思ったが、そう言うことか。
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カナリアナ(プロフ) - エルモさん:仲間ですね！！自己満足になってしまうんですが、小説も頑張っていこうと思います。読んでくれてありがとうございます！！ (2019年12月9日 21時) (
レス) id: ddfa994d58 (このIDを非表示/違反報告)
エルモ - ジョカゲ好きです！！ (2019年12月9日 20時) (レス) id: 9cee2cc714 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カナリアナ | 作成日時：2018年12月12日 21時
