34枚目 ページ34
あれを使う機会があるとは、と内心小さくため息をつきマークス中佐に向き直った。伊沢への尋問は一週間に及んだ。幸い、手荒な扱いは受けることなく。まずまずの待遇、尋問を受ける過程で伊沢はいくつかの事を確認した。相手がすでに知っていること、知らないこと、知りたいと思っていること、誤認していること。「......もう良いでしょう」伊沢は頃合いを見計らい。すっかり憔悴しきった様子を装い首をふる。「話すべきことは、全て話しました、全部です。裏も表もない真っさらですよ」
そんな伊沢の様子を見て「なるほど、ここまでのところ君の証言内容は悪くない。辻褄があいすぎているのが、いささか気になるところだが」疑うマークス中佐に「合いすぎているも、何も本当の事を話していますから」と気力もなく続ける。マークス中佐は換気口もないこの部屋でパイプの火をつけた。「もし君がユウキの部下でなければ我々も納得しているところだがね」伊沢が顔を上げる。「ユウキ、結城中佐......畜生。あんな奴、糞食らえだ」それに伊沢は言葉を続ける。冷徹野郎、人買い、女衒、地獄の使者、若者の生き血を啜る吸血鬼、サディスト。
やがて首を垂れて机の上に額をつけて呟いた。「もう、いい加減。勘弁してくださいよ。これ以上、何を僕に話せと言うんだ」項垂れる伊沢にマークス中佐は耳元で呟いた。「簡単なことです。君が知っていることを全部話せばいい」伊沢は一呼吸を置き言った。「おたくで僕を使ってくれません」そう言ってた。マークス中佐は片眉を上げて「ほう、すると君は自ら英国のために働く二重スパイに志願すると言うことかね」と口にする。「こうなったら自棄だ、何でもしますよ」
マークス中佐は目を細め、しばらく伊沢を注視していたが、よかろう。本心を確認させてもらうと、言い出した。背後でドアが開き、銀色の小箱が置かれた。伊沢が疑問に思うよりも先にマークス中佐が口を開いた。「うちで開発した最新の自白剤でね」透明の液体が入った注射器を伊沢の顔の前に掲げて言った。「手荒なことより、こちらの方が君の本心を確認できると言うわけさ」意図を察した伊沢は大きく目を見開き。次の瞬間、身をよじった。拘束具が金属音を立てて伊沢の抵抗を阻む。「やめろ。頼む、それだけは、やめてくれ」笑みを浮かべるマークス中佐とは裏腹に尋問室に伊沢の声が反響する。
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カナリアナ(プロフ) - エルモさん:仲間ですね！！自己満足になってしまうんですが、小説も頑張っていこうと思います。読んでくれてありがとうございます！！ (2019年12月9日 21時) (
レス) id: ddfa994d58 (このIDを非表示/違反報告)
エルモ - ジョカゲ好きです！！ (2019年12月9日 20時) (レス) id: 9cee2cc714 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カナリアナ | 作成日時：2018年12月12日 21時
