4枚目 ジョーカー・ゲーム ページ4
それをどう対処するつもりなのか知らないが結城中佐は連絡係と称した男にすらAを隠そうとはしなかった。これに何の意図があるのかは期間生ですら皆目検討もつかない。「陸軍中尉、佐久間参りました」張り詰める空気感を一声が遮った。「馬鹿か。貴様」軍人特有の仕草を見せた彼に目の前の人物は音も立てず気配も感じさせず近づき佐久間と名乗った彼の耳元でつぶやいた。「背広姿で敬礼する奴があるか」
気配を感じず身震いをする佐久間中尉を横目に男は話を進める。その男は、紳士と言うよりも地獄からの使者や悪魔と言う方がしっくりと馴染む。「それで貴様が参謀本部から派遣されてきたスパイという訳か」間髪空かずに、違います。自分はスパイの様な卑怯な行為などと言う佐久間の言葉を鼻で笑って「ほう、スパイが卑怯か」にやりと唇を吊り上げ笑った。
着いてこいと言われ、中佐の後ろに控えて彼らの試験を見学する。数日かけて行われたそれは佐久間の目には無駄として映る。階段や歩いた歩数を言えたこととスパイとしての仕事は別だと思うからだ。しかし、この試験を続けていくと脱落する者も少なくない。何人もがこの建物を後にした。
今日の報告も終わり結城中佐の部屋をあとに自室に戻ろうとすると「街に出ますが、佐久間さんもどうですか」三好が佐久間に話しかける。彼、三好は化物九人の中でもトップクラスに相当する。「否、俺は遠慮しておこう」いつもの様に奴らからの誘いを断る。断るのは今回が初めてではない。断りを入れても奴らは何度も誘ってくる。特別、残念がる様子も空気を読めと詰る様子も見えけられない事が更に俺と奴らの間に溝を設ける。
夜の街に消えていく八つの頭を窓越しに確認する。九人では無いことを考えると直ぐに合点がいった。期間生唯一の女がいた事を思い出す。彼女が期間生だと聞いた時は思わず声を上げてしまった。この陸軍内に女が所属している事を上に報告する荷の重さは想像を絶するものだった。結城中佐は何を報告してもらっても構わないとは言うが、考えなしに常識を覆す勇気は佐久間には無かった。
きっとAは奴らの誘いには乗らずに自室で過ごしているのだろう。可哀想に、こんな得体の知れない男世帯に未婚の女性を住まわせるだなんて。結城中佐は何を考えているのだろうか。佐久間が信じ難いことにこの寮には門限が無く。夜遊びは各々の自由。佐久間が卒業した陸軍士官学校とは似ても似つかず何もかもが違っていた。
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カナリアナ(プロフ) - エルモさん:仲間ですね！！自己満足になってしまうんですが、小説も頑張っていこうと思います。読んでくれてありがとうございます！！ (2019年12月9日 21時) (
レス) id: ddfa994d58 (このIDを非表示/違反報告)
エルモ - ジョカゲ好きです！！ (2019年12月9日 20時) (レス) id: 9cee2cc714 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カナリアナ | 作成日時：2018年12月12日 21時
