検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:42,467 hit

28枚目 ページ28

田崎がお手洗いへと席を立った。その田崎が居る個室を車掌がドアを叩き、奉天駅が間も無くであると伝え切符拝見を求めた。車掌に促されてドアを開け、田崎が車掌に助かったよと伝える。「切符を拝見しても」その問いかけにどうぞ、と田崎は切符を車掌に渡した。車掌の制服の袖と白の革手袋の隙間、わずかに露出している手首に小さな針が刺さった。


 車掌がそれに気づき信じられないと驚愕して自信の手首から顔を上げる。灰色の瞳に、やはりなと田崎は口の端を吊り上げた。暗殺者は車掌に化けてモロゾフ氏から警戒を解き、針状の道具で毒殺した。田崎が車掌に睡眠薬を打ち後ろを振り向いて声をかける。「終わりましたよ、エレーナさん」


 そう、あじあにはモロゾフ氏、暗殺者の他にエレーナが乗車していた。モロゾフ氏は一目惚れしたエレーナを連れ亡命を試みただが、元からエレーナには亡命するつもりなど無かった。だからエレーナはドイツ軍に加担してモロゾフ氏を殺した。「私は脅されて」言い訳をするエレーナをなだめる田崎。「安心なさい、あなたをソ連に引き渡すつもりはありません。ですが、あなたには日本のために働いてもらうことになりますが」


 モロゾフ氏の一件を終えて田崎とAは奉天駅に降り立つ。「さあ、洋子行こうか」列車を降りる前に田崎はちゃんと子供たちに答えははとと教えた。だが、はとはつばめより遅くつばめはあじあより遅いため、答えにならないと子供たちは怒っていた。Aは「まあ、見ててごらん」と子供たちをなだめる。


 駅に降り立つと田崎は懐から鳩を出し、腕を空へ振りかざすと鳩が飛び立つ。その姿に子供たちは驚きながらも納得の様子だった。その様子を見て「迎えを待ちましょう」と田崎をベンチに誘う。「今日のお出かけは君にとって退屈だったかな」意地悪で「そうね。ずっと座ってるのって案外つかれるものよ、礼二おじさま」と言ってみる。眉を寄せて田崎が続ける。「子供たちとばかり話したことを許してくれ次の外出は家族水入らず、出来れば三人で行きたい。そうだろ」


 するりと腰に回る手を払って続ける。「まあ。あなたとの間に生まれてくる子はきっと口達者な子ね」先ほどの三人の男の子が脳裏にチラついた。ちょうど良いところに迎えの車が姿を現し田崎の側から立ち上がる。「グッドタイミングよ、神永」そう言って神永の運転する車に乗り込んだ。

29枚目→←27枚目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (17 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
36人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

カナリアナ(プロフ) - エルモさん:仲間ですね!!自己満足になってしまうんですが、小説も頑張っていこうと思います。読んでくれてありがとうございます!! (2019年12月9日 21時) (レス) id: ddfa994d58 (このIDを非表示/違反報告)
エルモ - ジョカゲ好きです!! (2019年12月9日 20時) (レス) id: 9cee2cc714 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:カナリアナ | 作成日時:2018年12月12日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。