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20枚目 ページ20

「それで、マトの死因は何なんだ」結城中佐が口を開いた。「シアン化合物による窒息死でした。事件時飲んでいたワインに混入したと思われます。使われたのはごく一般的な青酸カリで入手経路の特定は難しいと思わます」「青酸カリ入りのワインね、因みに銘柄は」甘利質問に、「フランス製のシャトー・マルゴーだ」と答える。「待てよ。シュナイダーは語学が得意なはずだな確か、英語も長けていた」また、甘利に言葉に耳を傾ける。「それに、さっき見た遺書に一つ気になった事が。この右下の黒いものは何か書いていたのか」甘利は隣に座る田崎に見せている。


 「これはペン先を整えた跡か」確かに右隅が黒くなり、言われてみると田崎が言った通りペン先を整えたように感じられる。「そうかもしれない」甘利はそう納得すると「だが」と続けた。「クロスを二つ続けた様にも見える」 甘利と田崎、二人の会話に小田切も資料に視線を向ける。「英語でダブルクロスは裏切り。シュナイダー氏は誰かに裏切られた。または、誰かを裏切っていた。と」飛び交う憶測。「どう思います」福本のその考えに甘利が結城中佐を振り返り返答を求める。


 結城中佐は薄く目を開け「いずれにせよ、奴のスパイ網を抑える事だ。神永はシュナイダーの家に来ていた者の再調査。波多野は遺書の実物を調べろ。三好はドイツ、ソ連の大使館員の動向を確認。甘利は奴の近辺で英語を母国語にする者の調査。田崎は、ワインの輸入経路を当たれ。福本は、ワインに触れることのできた者のリスト。実井は、シュナイダー氏の筆跡について調べろ。Aは、中継役として集まった情報を伝えに来い」鶴の一声で蜘蛛の子を散らす様に会議室は結城中佐と小田切の二人のみになった。指示を受け、皆それぞれに散らばった重苦しい雰囲気の中口を開く。


 「自分は何をしたら良いのですか」自分だけ結城中佐に役割を振られなかった。役立たずの落款を押された気持ちだった。いや、実際はシュナイダー氏の死を報告した瞬間から既に押されていた印なのかもしれない。「野上百合子について調べ直せ」その言葉に意味があるとは思えなかった。野上百合子の事はきちんと調べてその場で報告した。証人者は小田切と結城中佐を除いて八名。嘘偽りのない報告だったのだ。野上百合子にこれ以上隠されたものがあるとは考え難い。それを調べ直すなど何たる屈辱か。

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カナリアナ(プロフ) - エルモさん:仲間ですね!!自己満足になってしまうんですが、小説も頑張っていこうと思います。読んでくれてありがとうございます!! (2019年12月9日 21時) (レス) id: ddfa994d58 (このIDを非表示/違反報告)
エルモ - ジョカゲ好きです!! (2019年12月9日 20時) (レス) id: 9cee2cc714 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カナリアナ | 作成日時:2018年12月12日 21時

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