19枚目 XX ページ19
お水をいただけませんか。動揺を露わにして警察の事情聴取を受ける女、野上百合子。恋人のカール・シュナイダーが死亡。警察は殺人の可能性は低いと考えていてこれ以上の捜査はせず。故人カール・シュナイダー、ドイツ人のベルリン・アルゲマイネ社の記者。容疑者として浮上した野上百合子、劇団員として活動。カール・シュナイダーの恋人、美人で聡明。事件の第一発見者。安原ミヨコ、劇団員として活動。野上百合子の後輩であり友人。事件発見時は百合子に連れられ百合子宅へ走って警察を呼んだ。
小田切は報告を終え顔を上げる。それぞれが、寛ぎながら会議に参加していた。一呼吸を置きじっと結城中佐を見た。「監視に気づいたシュナイダー氏が、自ら死を選んだ、という可能性はないのか」その質問に小田切が僅かに言い淀む。「まず、第一に。あの時点でシュナイダー氏が監視に気づいたとは考えられません」反論される。「だが、遺書の問題は」口調冷ややかに三好が問う。『じんせいにぜつぼうしました。わたしはしにます』
筆跡は本人のものでほぼ一致したのだ。だから、警察は事件性がないと判断したのだ。だが、死んだのはあくまでドイツ人記者。警察はスパイだという事は知るはずもない。「では、小田切は遺書は偽装でシュナイダー氏は殺害された、と言いたい訳か」神永の言葉に付け加える。「その点を考慮すべきと言っているんだ」小田切の言葉も「だけど、その可能性は自身で否定してるじゃないか」この言葉で切られる。「女が友達と帰宅し、悲鳴が聞こえた。それまで、誰もドアから出てはいない。と」波多野の指摘によって、小田切が希望を見出していた可能性は潰された。
小田切が追っていた人物が死んだ。それが他殺なのかも自ら死んだのかも知らない。しかし、どうであれこのD機関において死とはあってはならない。人の死とは嫌に目立つ。混乱を極めた状況下でスパイとして動くことは自ら身分を証にでる様なものだ。小田切に向けられる鋭い視線。クラスメイトの彼らにはこの事件の全貌が既に見えているのだろうか。分かっていないのは自分だけで、内心馬鹿にされているのではないかと言う考えが脳内を支配する。無言の空間はやけに長く感じた。実際の無の秒数など気にもしない程度だったが、自身の心拍数の上昇が相まって小田切に酷い焦燥感をもたらした。唾を飲み込む音ですら響く様だった。
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カナリアナ(プロフ) - エルモさん:仲間ですね！！自己満足になってしまうんですが、小説も頑張っていこうと思います。読んでくれてありがとうございます！！ (2019年12月9日 21時) (
レス) id: ddfa994d58 (このIDを非表示/違反報告)
エルモ - ジョカゲ好きです！！ (2019年12月9日 20時) (レス) id: 9cee2cc714 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カナリアナ | 作成日時：2018年12月12日 21時
