15枚目 ページ15
結城中佐は驚きもせずに佐久間に言う。「貴様調べたな」佐久間の追っていたパズルは様々なヒントを持ってして完成した。結城中佐は機会を伺っていたのだ。武藤大佐がヘマをするのを。軍内部に存在するスパイ養成所と言っても所詮は貧乏所帯である。大東亜文化協曾を宿舎として与えられてはいるものの表向きは小さな会社と偽っている。
そんなD機関でも今回の件で参謀本部が握る膨大な機密費から武藤大佐は結城中佐に言われるままにD機関に金を回させざるを得ないだろう。自分の経歴を守るためなら大したことない犠牲とも言えるが、結城中佐に弱みを握られる形になる為に苦虫を噛み潰した気分を味わっているに違いない。上の空の佐久間を他所に「貴様、うちで訓練を受ける気はないか」と言う結城中佐の提案に佐久間は無言で首を振った。腹を切る覚悟をした時、佐久間は三好の意図を察することができた。しかし、それはたった半分だ。武藤大佐が謀った隠蔽までもは見破ることは出来なかった。
それがあるからこそ佐久間の立場を再度認識せざるを得なかった。「自分はあくまで軍人ですから」きっぱりと申し出を断りながらも、胸の内に湧き上がる感情が確かにあった。「必要とあらば、いつでも腹を切る覚悟があります。ただ」結城中佐に対して言葉を発せなかった。駒として使い捨てられるのはごめんだ。軍人として抱いてはならなぬ観念を脳内から振り払う。そんな足を止める佐久間を結城中佐は知ってか知らずか放っておき、歩き去った。
所詮、軍人は軍人なのだ。化け物の真似事をしようとも化け物の考えまでもを正確に理解する事などできるはずも無い。帰路に就きながら哀愁に浸る佐久間の目の前を桜が散って行く。ゴードン邸で腹を掻っ切っていたら見る事のできなかった光景だった。ある意味、佐久間は機関生に救われたのかも知れないと戦争の足音が聞こえるのを背中に感じた。佐久間はあくまで自分は軍人だと自分自身に言い聞かせた。それは自分の上司である武藤大佐を結城中佐の尻に敷かれるのをの前でいた様な自分の姿を払拭する為であるとも言えた。
今頃、三好たちは料亭にでも行っているのだろうか。そこで佐久間の醜態を笑っているのかも知れないし今日の件で結城中佐に駒にされる武藤大佐をつまみに酒を飲んでいるのだろうかと思うと、いささかあの化け物たちも人間味を帯びた存在に感じてしまう。しかし、どのみち自分には関係のない世界だと話に終止符を打った。
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カナリアナ(プロフ) - エルモさん:仲間ですね！！自己満足になってしまうんですが、小説も頑張っていこうと思います。読んでくれてありがとうございます！！ (2019年12月9日 21時) (
レス) id: ddfa994d58 (このIDを非表示/違反報告)
エルモ - ジョカゲ好きです！！ (2019年12月9日 20時) (レス) id: 9cee2cc714 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カナリアナ | 作成日時：2018年12月12日 21時
