2枚目 ページ2
「いいえ、いませんわ」ならばと男は追って声をかける。「もしここで僕があなたを好きだと言っても嫌ではないですか」ここで逃すのでは惜しかった。「はい」しかし、粉砕に終わった。短くも端的な答え。次の曲が始まる前。男の背は、先ほどよりも小さく惨めに見える。疲れきった面持ちで帰っていった。
日本人留学生の女とその付き人の姿がパーティ会場のバルコニーで見られた。「意地悪ですね。貴女は」心外だとでも言うように顔を顰める女。「三好に言われる筋合いはないわ」三好の事を咎める言い草だった。「いいえ、意地悪ですよ。少なくとも結城中佐の次くらいに」鈴の音のような声で笑う。「あとで、この事も結城中佐にきっちり報告しておくわね」その声がバルコニーに響く。「それは遠慮したい」
さっき交わした、男女の会話の真実はこうだった。「Would you mind if I say love you? (好きだと言ったら気にしますか)」「Of course, yes.(もちろん、嫌よ。)」なぜ、こうなってしまったのだろうか。女は文章の意を理解できなかった。いいや、違う。男が言った、Would you mind if I say love you? (僕が君のこと好きだと言ったら気にしますか)に女はOf course, yes. (もちろんよ。 )と答えた。つまり、嫌いと答えたのだ。日本語では、「僕が君のこと好きだと言ったらどう思うのか」の返答に「もちろん良いわ」この返しは完璧だが、ここはイギリス。公用語は英語なのだ。まあ、留学生なら無理もない。後になってこの文が否定疑問文だと分かったとしても答えを間違ってしまったのだから。弁解の余地は無い。意地悪だなんて、ひどいわね。
それからホテルに戻り、三好とAは一緒にいた。「それで、どうだったんです、あの男」三好の問いに答える。「匂いはしなかったわ」Aが接触したジョンソン・ロバートには、阿片密輸の疑いがかかっていた。匂いはもちろん、ジャケットの裏地まで確かめたが細工の跡は無い。よくパーティへ参加しているところから見るとパーティで阿片を売買していると踏んだがどうやらその結果が得られなかった。
「そうですか、なら結城中佐に報告をしましょう」と言うと、さっき、終わったわと返される。「ほう、僕には分からなかったが」今度は男がむっとする番だった。「ええ、三好には報告してなもの」無人のはずの廊下に響くノックの音。ドアノブが回る音が部屋に響いた。
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カナリアナ(プロフ) - エルモさん:仲間ですね！！自己満足になってしまうんですが、小説も頑張っていこうと思います。読んでくれてありがとうございます！！ (2019年12月9日 21時) (
レス) id: ddfa994d58 (このIDを非表示/違反報告)
エルモ - ジョカゲ好きです！！ (2019年12月9日 20時) (レス) id: 9cee2cc714 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カナリアナ | 作成日時：2018年12月12日 21時
