私は、皆のことが。【東リベ】 (ページ42)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:33,887 hit

大事な愛する唯一の妹へ　翔side ページ42

Aが寝ると言ってから暫くすると規則正しい呼吸音が聞こえてきた。
少し覗くと長い睫毛を伏せ、宝石の様に輝く瞳を隠したAの姿があった。
伯父や伯母はAの事を人形の様に思っている。そしてAもはっきり断る事は無い。そのせいで尚更２人は人形として扱おうとするんだろうけど。

確かにAは人形の様に美しい。けれど人形では無い。俺の１人の妹だ。
東卍の話をしている時なんて輝くような笑顔を浮かべている。Aにとって東卍は大事な存在なんだろうな。
と思い出しながら頭を撫でるとAは少し動いて

『…ん……おに……ちゃ……』

と言っていた。一瞬起きてしまったかと焦ったがそんな事は無く、寝言だったようだ。
その寝言はおそらく俺の事で、夢の中にも自分が居るんだと嬉しく思った。
そろそろ寝ようと考え、その前に飲み物を取りに行こうと部屋の外に出る。
暗く長い廊下を通る。家はとても静かで自分の足音しか聞こえない程。

だが、その時何処からかギシッという自分が出していない音が聞こえた。

「っ！？」

振り返ろうとした瞬間、腹部が急激に痛くなった。それと同時にとてつもない熱さを感じる。
刺されたのだと本能的に察した。何が目的なのか知らないがAだけは守らなければ！と思い激しく痛む腹部を無視して部屋の方へと戻る。
俺を刺してきた奴は追っては来ない様だった。ということは金目当てか？
そしてAが居る部屋のドアにもたれ掛かる。この傷ではAを庇いつつ逃げるのは難しい。

「……携帯………は…」

服のポケットに入れていた携帯を取り出す。
そのまま開いて警察に電話をしようとする。が、もう、手がほとんど動かなくなってきた。もうすぐ死ぬのかと理解した。
Aに、伝えたい事が……！

「(Aはきっと俺が居なくなったら相当悲しむ。その悲しみを無くしてくれるのは…きっと……きっと…！)」

《東卍》

ぐっ…手が、もう…ちゃんと伝えないと、いけないのに！
俺を刺してきた奴が金目当てであればAは心配無い。それ以外であっても俺がここで倒れているだろうから時間を稼げる。
その間にAが気付いてくれれば…！

警察に電話をした方が良かったのだろう。でも、どうしてもAには沢山の味方が居る事を伝えたかった。じゃないと……

「…っ…ごめん、…でも、A…には……東卍…が…必要だと……」

ごめんな、A。
世界で１番、愛してる。