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〃【2】 ページ8

トレーを片手にドアを開ければ、視界に入るデスクの上の大きな箱。

予想はついていたのに、思わず口元が緩む。


「誕生日おめでとう、左馬刻」


美しい黒い瞳を優しく細め、柔らかい声で、心底愛おしそうに言葉を紡ぐA。

他の誰に言われるよりも響くその言葉に、どうしようもない胸が甘く締め付けられる。

「…毎年毎年飽きねぇなぁ。ほらよ」
「ありがとう。ほら、お前に似合うと思って選んだんだ。開けてみて」

誕生日の当人よりも楽しそうにしている姿に、愛しさが募る。ありがたくまぁまぁな大きさの箱を開ければ、

「おぉ…」
「ふふっ…気に入ってくれたか?」
「あぁ、大事にする」
「そうしてくれると嬉しいよ」

中には、ブランド物のブーツ。本革だろうか…自分の物には無頓着なくせに人の物に大金を使うのを厭わない部分は心配になるが…だがこれもAの性分だ。その分こいつは俺が甘やかせばいい。

「左馬刻」

名を呼ばれたかと思えば、ぎゅうっと優しく抱きしめられる。頬に手を添えられ、コツンと額が触れ合った。

「生まれてきてくれてありがとう…私と出会ってくれて、側にいてくれて、ありがとう」

そんなの、こっちの台詞だ。

決して綺麗とは言えない生き方の俺を肯定してくれる事がどんなに嬉しいか、お前は知っているのだろうか。

「これからもよろしくね…愛してる」

去年まではなかった、甘い言葉と口付け。
それは、反則だろう…

募る愛おしさをそのままに力任せに抱き締める。

「…ありがとよ」

Aから与えられる愛が暖かくて、優しくて、
熱くなる目頭を誤魔化す様に、抱き締める力を強めた。



Happybirthday!November,11th

隻眼と警官【1】→←隻眼と恋人ー11/11ー【1】



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作者名:和三盆糖 | 作成日時:2020年10月18日 20時

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