【文豪ストレイドッグス】俺自身には価値なんてない。【男主】

真実を見抜く。 ページ33

中原さんは島崎のことをじっと見つめる。
奴が変な行動をとった時にはすぐさまぶち殺してやる、そんな域だった。

俺はまだぼんやりとする意識の中島崎の方を見た。
島崎は中原さんに睨まれてとても嬉しそうにしている。
そして小さな声でつぶやいたのだ。

「待ってたよ…私の王子様」

一瞬島崎が何を言っているのか理解できなかったが、気が付くと島崎は異能を発動し姿を消した。
中原さんが舌打ちをする。



「……！！うしろっ…！！」

「っ！！？」

その瞬間中原さんの体が島崎によって拘束された。
…いや、正確には島崎が生み出した幻に拘束されている。

「僕の異能は探偵社の彼よりも力が上なんだ。だから幻でも触れられるし匂いも味も再現できるんだ。」

凄い異能だろう？と中原さんに視線をやる島崎。
その時俺はあることに気が付いた。

(…つまり、俺はこの日まで水しか摂取してなかったってわけか)

だから体が動かないわけだな。
今は島崎が先程打った強力な栄養剤か何かで一命を取り留めている状態なのだろう。

先ほど叫んだためか、体力をかなり消費してしまったらしい。
目を開けるのもきつい。

しかし、中原さんと島崎の戦いはどうやら島崎がリードしているようで。
かなり辛そうである。






その時、ぴたりと島崎の動きが止まった。


「……して…」

「あ？」

中原さんは急な出来事に首をかしげる。
島崎は中原さんを睨みつけて叫んだ。









「どうして私じゃないのよ！！！！！！！！！」



島崎の精神が不安定になったことで、彼の異能が力を失った。
強い強風にあおられ、何とか目を凝らすとそこには想像もつかない光景が広がっていた。






先程まで孤島だと思っていた場所は、このヨコハマにある廃校になった中学校の屋上だったのだ。
何が起こったのかと思い島崎の方に視線をやって絶句した。









其処には美しいとは到底言いにくいような、醜い老婆が立っていたのだから。

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