【文豪ストレイドッグス】俺自身には価値なんてない。【男主】

首領と御褒美 ページ18

「首領、ただいま帰りました。」

「やぁ、早かったね」

首領は椅子に座ったまま、窓の外を眺めているようだった。
右手には何らかの資料を持っている。

俺は膝をつき頭を下げた。

「君が探偵社に面倒になっているとは思わなかったよ。怪我の方はどうかね？」

こちらを見てにっこり、微笑む。

「はい、向こうで治癒能力を持った異能力者に治してもらいました。」

記憶は無いが。きっと与謝野先生はは直してくれたのだろう。
傷一つありません。俺がそう答えると彼は「そうか」としか言わなかった。

「あの爆発はここ最近ヨコハマにやってきた海外の過激派テロ集団のメンバーのひとりが仕掛けたものだったよ」

もちろん、あっさり捕まったけどね。
そう言いつつ、首領は資料を置き立ち上がる。

「君は爆発の際、エリスちゃんを体を呈して守ってくれたそうだね。」

彼は俺の目の前に来るとグイッと顔を上に向けさせた。
俺と首領の視線が絡む。
そのうち、満足したように頷くと俺の顔から手を離し「そうだ！」と何かを閃いた。

「エリスちゃんを守ってくれた君に御褒美をあげよう。」

「御褒美……ですか？」

嫌な予感しかしない。
彼の笑顔は何時も何かを狂気じみたものを感じるのだ。




俺は長く続く廊下を歩いていた。
結局首領からは「御褒美は君とエリスちゃんとの約束が終わってからにしよう」と言われ、部屋を追い出されてしまった。

コツコツと高いヒールの靴が発する音が響く。
そういえば俺とエリスちゃんとの約束はまだ続いていたな…としみじみ思い返す。

あと、3日…それが終わればまたズボンを履くことができるのだ。
そう思うと、少し身が軽くなった。

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