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?「おーいたいた」
ボゥっとしながら思考を巡らしていると、呼び止められる。
声のかかった方に目を向けると、そこには赤茶色の済んだ水色の瞳を持った男が立っていた。
?「あいつの様子、どうよ。どーせまたお前が世話係なんだろ?」
勾「・・・まぁ」
紙の束を片手に、男は小猫を見下ろしてくつりと笑う。
?「で?」
勾「・・・部屋から出ない。ご飯も食べない。父様の言葉にも答えない。薬の副作用で少々弱っている」
?「無理矢理?」
勾「でないと食べてくれない」
?「狐の方は?」
男が問うて、小猫が答える。小猫が答える度に、男は紙に万年筆を走らせて、文字を刻んでいく。
勾「まず狐さんのほうがあの子と口を開かない。父様も許さないだろうし」
?「お前は?」
勾「猫の姿なら。人間の時と猫の時、別の存在だと思っている。多分」
?「・・・・・・なるほどねェ・・・」
万年筆を止め、にたりと、悪そうな笑みを浮かべる。
?「サンキュー、キャットフードでも買ってやるよ。気が向いたら♪」
勾「つきまとうのか?」
?「取材取材♪」
会話できているのかできていないのか。男は万年筆をクルクルと回しながら小猫に手を振り、雫罪のいる部屋とは反対方向に向かう。
勾『向かわないってことは、まだ前のは完成してないのか・・・珍しい・・・まあ、いいか。僕は言われたとおり、世話をするだけ』
水色の子猫は、雫罪より少し高い背丈の子供の姿に変わると、雫罪の部屋に向かう。
勾「雫罪」
締め切られた雨戸に明かりのない、扉から入る光が、部屋を照らすだけの薄暗い部屋。その部屋の隅に敷かれた布団の膨らみが名を呼ばれたとき少しだけピクリと揺れるが、出てくる気配はない。
勾「ご飯の時間」
その言葉に、先程より膨らみがびくりと跳ねる。
勾『・・・怖がってる・・・これでは、ますます食べてくれなくなる・・・困ったな』
そっと溜息をはくと、雫罪の傍にご飯の乗ったトレーを置くと、少し離れた所に腰を下ろす。
勾『少し経っても食べないようなら、また無理矢理食べさせるしかないか・・・』
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作者名:ロロノア | 作成日時:2019年10月31日 19時