佐久間くん (ページ15)

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あれよあれよと個室に連れていかれ部屋に着くなり手を離され、帽子を外した男性に「大丈夫？」なんて声をかけられるけど首を横に振ることしか出来ない

「泣かないで、そうだよね…怖いよね…」

「急にこんなところ連れてきてごめんね、店に入った時から絡まれてんなぁと思ってて、気になって様子見に行ったらまだ絡まれてたから連れて来ちった…怖かったよねごめんね」

そう言って彼はハンカチを貸してくれる

「っすみま、せ…」
「いいのいいのごめんね、サクマが悪いの」

なんて言ったあと、あ…とバツの悪そうな顔をするから不安になる

「…俺のこと知ってたり、する？」

そんなことを言われて分からなくて眉を下げるしか無かった

「んなこと急に言われてもびっくりするよね、ごめんね」
「え、っと……」
「んにゃ、いいのいいのもっと有名にならなきゃな～」

と笑う彼はきっといい人だ

気付けば涙も止まっている

「助けてくださってありがとうございます…ご迷惑おかけしてすみません…」
「いやいや、んなこと…俺こそ勝手に連れ込んじゃって…」
「全然…、助かりました」

「えっと…」なんて口ごもる
だ、誰だ何さんだお礼とかした方がいいの？
未だ若干パニックな脳みそをフル回転させる

「お、お名前とかって…」
「えーっと…」

なんて彼はまた口ごもる

「あ、あんま聞かない方がいいんですかね…お礼しなきゃと思ったんですけど……」
「お礼なんて全然！結局助けたつもりで泣かせちゃったし」
「で、でも助けていただいたので……」
「んにゃ、わかった…明日またここで会おう」
「え……」
「だめ？」
「いや、全然、、」

そんな約束をした、気がする
その後気付いたら店の外にいて、彼にタクシーを捕まえてもらい、タクシー代とお金を握らされ

「気をつけて帰るんだよ」

と言われていた