*secret recipe*６ (ページ42)

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secret Christmas19 ページ42

A 『狭くてすみません。社用車なんで・・・』

なんて言われて乗り込んだ車は誕生日ドライブの時に乗ったあの車で。

あの時をなかったことにしようとしてるA。

車内は相変わらずキレイで。

だけども前の時とは違って、流れてくる音楽は洋楽。

些細な事一つ一つに胸が痛む。

A 『地下駐車場に横付けしちゃいますね。』

そう言ったきりAは何にも喋らなくて。
そんな空気に耐えきれなくなった俺は。

翔『髪、切ったんだね。』

ってタモさんみたいな事を言うと。

A 『はい。・・・燃えちゃったんで揃えたんです。』

って予想外な返事が返ってきて。

翔『え？燃えた？』

A 『はい。笑・・・ぼーっとしてたら火花が飛んで・・・』

そう言って苦笑するAをみるのも久しぶりで。

翔『・・・ごめん。』

って謝るしかなかった。

A 『え？なんで櫻井さんが謝るんですか？笑・・・大丈夫ですよ。私が悪いのわかってますから。・・・気にしないで下さい！』

あぁ、そうか。

確か何かの雑誌に『男は未練を残すけど女はさっぱりしたもんだ』みたいな事、載ってたな。

ってことを思い出して。

翔『そっか。・・・俺と別れて清々した？笑』

なんて。

情けない言葉を言ってもAからは何にも返ってこなくて。

チラッとAを見ると。

赤信号だからかAは窓の方を向いていて。

だけども。

その窓に反射して映ってる表情は。

まさしく。

泣き顔で。

もう。

その顔を見たら。

A 『・・・え？』

Aの左手を握ることしかできなくて。

信号は青になって車が動き出す。
必然的にAは右手だけで運転する事になるから俺の顔をチラチラ見るんだけど。

俺はそれを見ないフリして。

Aも何かを感じたのか戸惑ってるのか。

その手は離されることなく。

車はすぐ近くの俺のマンションの地下駐車場に吸い込まれて行った。

A 『今日はありがとうございました。・・・佐々木に代わってお礼申し上げます。』

翔『佐々木、って部長？それとも慶くん？』

A 『あ。・・・どっちもです。』

そうやって言って笑うAの顔をもう一度見て。

俺の中の何かが弾けた。

それでもこれ以上会話が続かないと判断した俺は。

翔『じゃあ、気を付けて帰ってね。』

そう言って。

ある賭けをして車から降りた。