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平凡は消えることを恐れる。《マリー・クロー》 ページ6

家の扉を開け、外に出る。
ぴゅうっと音がして冷たい風が頬を撫でた。
ほう、と息を吐きだせば白く曇る。

―あぁ、冬が来た。

「×××は大丈夫でしょうか...。寒がりですから...」

もう十一月も末。
冬が来たと思うのは些か遅いのだろうが、今まで暮らしてきた場所は普段から冷たい世界だった。
だから、少し暖かな場所に来ると冬のお訪れを感じることが遅くなってしまったのだろう。
冷たさで固まっていく手を息で温め、歩道へと歩みだした―――。



ドンッ!!!


「――え」

何か重たいものがぶつかるような鈍い音が鼓膜を揺さぶる。
視界がぐるりと回転する。猫が空を歩んでいる。
足の感覚が無い。
寒い。
冷たい。
熱い。

ぴく、ぴくと体が痙攣する。

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い...!!

誰かの声が聞こえる。

視界がゆがむ、かすむ。

口が動かない。

イタイ。

寒い。

熱い。


何も考えられなくなる。
何が起こって、何がどうしたのかがわからない。
わからない。理解が追い付かない。

霞んでいく視界にダレカがいる。
ナニカがある。
ナニカがそこにある。

そのナニカにひどく心が惹かれる。
でも、ナニカは見えない。

そのナニカをつかみ取りたいのに、手はもう動かせない。

「――い。」

「だ――」

「――ろー。」

「――りー、だ―――。」




「―――――。」



声が、聞こえなくなった。

どうでもいい《光星 花音》→←偽物の涙は幻覚を《水輝 藍》



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アキ(プロフ) - 更新しました! (2021年6月27日 18時) (レス) id: b96de93cbe (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - 更新失礼します(_ _*)) (2021年6月24日 8時) (レス) id: b96de93cbe (このIDを非表示/違反報告)
チェシャ(プロフ) - 更新致しました!! (2021年6月6日 1時) (レス) id: a51ba78153 (このIDを非表示/違反報告)
チェシャ(プロフ) - 更新失礼いたします…!! (2021年6月6日 1時) (レス) id: a51ba78153 (このIDを非表示/違反報告)
シャーペンの芯(プロフ) - 更新終わりました…! (2021年5月29日 21時) (レス) id: 37f133a8ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雛瀬 紗良. x他8人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2021年1月8日 19時

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