君に会うため【地縛少年花子くん】 (ページ5)

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ミサキ階段　其の弌ページ5

終業のチャイムが鳴って、教室の至るところで会話が飛び交う。
ナギサ先生が静かにしろ、なんて言いながら教壇に立った。

まずはこの世界での私のことを軽く整理しよう。

私はかもめ学園一年A組、つまりは寧々ちゃんと同じクラスであるらしい。
部活には入っておらず、特別に仲の良い友達というものもいないようだ。

――それはそれでどうかと思うけど。

けれどそれは都合が良かった。
知らない相手と自然を装って付き合う理由もなくなったのだから。

容姿は以前と変わらず。
とは言うものの漫画風になったことで随分と可愛らしくはなったのだが。

――でもま、それでもこの世界では平均だもんなあ。

漫画というのは末恐ろしい。
元の世界で生きていけなくなるな、なんて考えて。

そうして、今の時間軸は丁度、岬階段が始まる直前のようだ。

そう判断した理由として。

チラリと背後を盗み見る。

――ああ、目の保養……

拝みたい気持ちをぐっと抑え込んで聞き耳を立てる。
葵ちゃんが精一杯おどろおどろしく岬階段の話をしているのが聞こえた。可愛い。

「おーい」

新たに聞こえた声に扉に目をやる。
ナギサ先生が“進路相談”と書かれた紙を持って葵ちゃんを呼び出していた。

「また怖い話探しておくから元気だしてねっ！」

そう言いながら駆けていく葵ちゃんが可愛い。

――もうあれ天使じゃんなにぃ……

はあ、と目頭を抑えながら立ち上がる。
がたりと音がして、それに反応した寧々ちゃんが敦賀さんまた明日ね、と声を掛けてくれた。

もうあれ天使じゃん(二回目)

「うん、明日」

にこりと人当たりの良い笑みを浮かべて手を振る。
教室を出て美術室の方へ足を向けた。