16時の書庫 其の弌 ページ14
放課後。土籠の元、つまりは16時の書庫へと足を向けていた。
――とは言っても。
どの本に触れれば良いのか、なんて分からない。
手当たり次第に触っていく。
――地道……
一瞬触れて、すぐに次の本へと移動する。
ほんの少しの違和感。
ぶわりと煙に包まれて咳き込んだ。
目を開くと扉が現れていた。
――当たり。
お邪魔します、と溢しながら中へと入る。
クモの巣がそこら中に張ってある。
薄明かりの中、ポツリポツリと浮かぶ灯りが何とも言えない不気味さを醸し出していた。
一歩進むごとに足元で水が跳ねる。
ずらりと並ぶ本が気にならないと言ったら嘘にはなるが、目的はそれじゃない。
「土籠せんせー」
ぱしゃり、と水を跳ね上げて彼の名を呼ぶ。
暗闇から現れた彼は気だるそうにしていて、そんな彼を見て私は笑みを浮かべた。
「何してんだ、こんなとこで」
「ちょいと話したいことがありまして」
土籠ははあ、とわざとらしく溜め息を吐き出す。
私はそんな土籠に分かってますよね、と言葉を投げた。
「未来なんて知っても良いことなんかねぇぞ」
「それでも、って言ったら?」
土籠はじっと見据える私を見返して口を開く。
「教えてやんねえ」
「エッ」
そこは教えるとこでしょう、なんて言ってみても知らぬ存ぜぬを貫き通す土籠。
「それよりお前、早く帰れ」
「また来客ですか」
大変ですね、なんて言ってみる。
土籠はピクリと眉を動かして私を睨み付けた。
「何で……」
ガタン、と何かが倒れる音が響いた。
次いで足音と話し声が聞こえる。
土籠は大きく舌打ちをして音の鳴る方へと歩いていく。
「……何でお前までついてくるんだ」
「いやぁ、気になって」
くひひ、と笑い声を溢すと何とも言えない表情をされた。
気持ち悪いの自覚してるけどもうちょっと隠してくれても良いんじゃないかな土籠先生。
行く先で三人の人影を捕らえる。
土籠は背を丸めてンン、と咳払いをした。
「ああーっ、何やってるんですか!」
何とも頼りのない土籠先生が境界を駆けていく。
散らばった本を拾いながら元の場所へと仕舞っていくその姿は先程の土籠とは別人のようだ。
「先生後ろ!!」
光くんの注意を聞いてか聞かずか、土籠はべちん、と蝶の塊で出来た化け物を押し潰す。
「黙っていればギャアギャアと……やかましいんだよ」
低い声でガキは嫌いだ、と続ける土籠。
そんな彼の後ろに隠れるようにして仕舞いきれていない本を戻していく。
「どうしてくれようか」
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作者名:八重 | 作成日時:2020年6月24日 20時