綺麗事ばっかじゃ世界は廻らねぇ 〜前編〜 ページ39
暗くて、狭くて、息苦しい。
ここは、どこ。
ぼんやりと暗闇に浮かび上がるのは一本の縄。
何だか綱渡りのようだ、と考える。
背後からずるりと何かが引き摺られるような音が聞こえた。
怖くなって少し躊躇しながらも足を踏み出す。
何だかグラグラしていて、どうにも安心できない。
ビクビクしながら歩みを進める。
「あ」
足を踏み外して、重力に従って落ちていく。
嫌だ。落ちたくない。
頼りない縄に必死にしがみつく。
思うように呼吸が出来なくなった。
視界が霞む。
もういっそこのまま堕ちてしまえば、楽になれるのだろうか。
苦しくて、辛い。
僕は、どうして生きているのだろう。
何のために努力しているんだろう。
嗚呼、こんな思いをするならいっそ、死んでしまいたい。
「そんなこと言わないで。生きていれば、生きていて良かったと、死ななくて良かったと思える日がきっと来るよ」
声が響いた。誰だ。
咄嗟に振り返る。人の姿は、ない。
なんとかよじ登ってほっと息を吐く。
縄の下に広がる、無限にも思えるような闇に顎に冷や汗が伝った。
「大丈夫。明日はきっと良いことがあるよ」
また、声が響く。
少しずつ歩みを速める。
その声から逃げるように、歩みを速める。
「死んで良い人間なんかいないよ」
煩い、煩い、煩い。
黙れ、と叫んだ声は闇に溶けて消えていった。
ここでは声を放つことは出来ない。
それを理解して、走り出す。
不思議と足元の不安定さはなくなっていた。
「努力は必ず報われるさ。だから諦めないで」
ふざけるな。
何も知らないくせに。
何も知ろうとしないくせに。
お前たちが僕の何を知っているんだ。
お前たちが僕に何をしてくれるんだ。
お前たちは、僕の人生を保証してくれるのか?
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八重(プロフ) - カシオペアさん» ありがとうございます!!まさかこっちまで読んで頂けるとは……その上コメントまで……本当に感謝します(*/□\*)上手なんて、恐縮です……(でも嬉しい)頑張ります!ありがとうございます!本当に!!! (2017年7月3日 21時) (レス) id: e19e44ac0b (このIDを非表示/違反報告)
カシオペア - ヒロアカの方を読んだので、こちらものぞいてみましたが本当に文を書くのが上手なんですね。一つ一つが短くて読みやすいです。更新、頑張ってください! (2017年7月3日 20時) (レス) id: 972c361b83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八重 | 作成日時:2017年4月24日 2時