八階 ページ8
「あぁ……」
夜の帳が降り、八階の部屋から見る自宅マンションの周辺は昼の賑やかさをすっかり潜めていた。
窓際に置いたソファーで冷たい夜風に吹かれながら、開けた窓から星を眺める。グラスに注いだ濃いウイスキーを少量ずつ口にするも、今は味わう余裕がない。仕方なく、正式な名前も知らない柄杓型の星座を追うように目を動かす。確か何かの尻尾だったと思うのだが、何だったか。
その柄杓型の星座を眺めていると、近くに控え目な光を見つけた。
さすがにあれの名前は知っている。
北極星。一年中動かない星。
「思い出してしまうなあ……」
あの北極星のように、どれだけ周りが移り変わろうとも、どれだけ周りが輝こうとも、いつも私の心の真ん中に静かに在る太宰という男のこと。
そいつを思い浮かべた瞬間、私は無意識に首に手を伸ばした。
首にあるのは、何の装飾もない華奢な銀のネックレス。
__これは首輪。太宰が自分の存在を私の中に封じこめる為にした“鎖”。
あの夜、私を抱きしめた太宰が去っていく前に首に付けたものだ。
太宰は私に執着していた。自惚れなどではなく客観的な事実だ。
私の意思を変えられなかった太宰は、せめてもの印に自分の存在を私に刻みつけた。私がずっと自分のことを忘れないように。それがこの“鎖”だ。
__ああクソ、お前のようなずるい奴、本当に大嫌いだ。
__お陰で私は今でもお前を愛することをやめられないんだぞ、馬鹿。
目の端から雫が零れ落ちる。それはあえて拭わずに、溢れ出てくる懐かしさと愛しさだけをウイスキーと共に飲み下したのだった。
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みみくも@文スト沼(プロフ) - 八紡陽人@双黒尊いさん» 図々しいなんてそんなことないですよ!!新作楽しみに待っております(^^) (2017年8月7日 12時) (レス) id: 413539ed0e (このIDを非表示/違反報告)
八紡陽人@双黒尊い(プロフ) - みみくも@文スト沼さん» お読み頂きありがとうございます!褒めてくださって嬉しいです!掛け持ちが多すぎて中々内容修正が進みません(;´ω`;)図々しいですが、もっと精進致しますので、もし新作出すようなことがあったらまたお願いしますm(_ _)m (2017年8月6日 22時) (レス) id: 9661550765 (このIDを非表示/違反報告)
みみくも@文スト沼(プロフ) - すごく面白かったです!!もっとたくさんの人に見られる事を祈ってます!! (2017年8月6日 20時) (レス) id: 413539ed0e (このIDを非表示/違反報告)
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