【文スト】領収書【太宰治】

六杯 ページ6

＿＿とまあこんな感じで、今の私は太宰が大嫌いなんだよ。



　……あいつを想い出す度に苦しくなってしまうからね……。



　はははっ。つまらない話だったね。他人の悲しい色恋の話など、薄い酒の肴程度にしかならない。



　付き合わせてしまって悪かったね。結局、君は何杯食べたんだい？



　……ふふっ。六杯か。ずいぶん気に入ったようだね。また誰かに連れていってもらうといい。例えば、サボり魔の上司、とか。



　会計はここに置いておくよ。多分釣りがたくさん出るはずだから、それは取っておいてくれ。話を聞いてくれたお礼だ。



　ありがとう。楽しかったよ。



　……ん？何で君を呼び止めたかって？



　んー……強いて言うなら、人が好さそうだったからかな。本当に大した理由なんてないんだよ？



　きっと私達はもう会わないよ。会ったとしても、こうやって和やかに会話を交わすことなど出来ない立場だろう。



　だから今日のことは忘れてくれて構わない。



　本当に楽しかった。じゃあね、“中島敦くん”。

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