【文スト】領収書【太宰治】

二人 ページ2

ふふ、君は本当に茶漬けが好きなんだな。もう四杯も食べているじゃないか。



　……その海老茶漬けも気になるのかい？



　いいよ。遠慮はいらないと言ったろう？



　……名前はいいよ。聞かなくていい。代わりに私も君の名前を聞かない。お互い深い詮索はなしだ。



　……そろそろ話をしようか。ああ、食べながらで構わないよ。



　じゃあねぇ、突然なんだけど、……私には好きなひとがいたんだ。



　…………。



　……はははっ！やっぱりその顔をした！初めに声をかけたときより数倍愉快な顔だ！呆気に取られたときの人間というのはどうしてこうも面白いんだろうね！



　ふぅ。悪いね。からかった訳ではないんだ。紛れもなくこれが本題だ。



　その好きなひとというのはね、元同僚なんだけど、その職場がちょっと悪いとこだったんだ。ただ、今はそいつはそこを抜けて、明るい光の下で暮らしているけれどね。



　そいつの名前は“太宰治”っていうんだけど……おや、知った顔かい？



　ん、ああ、いや。詮索はなしだったね。ごめんよ。



　……私とそいつはお互い好き合っていた。いつから、どうして。そんなのは微塵も覚えちゃいないが、とにかく二人は愛し合っていたんだ。

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