生まれ変われるなら。２【Kn】

５６ ページ8

.
※gロ表現注意
---


部屋には、運良くターゲット2人と暗殺者の私のみ。

此処でやらなければ恐らく今日中に仕留めるのは難しくなるだろう。



「さっきはよくもわたくしに恥をかかせてくれたわね」


「ベルは貴方の所為で大変傷付いていますわ。
謝ったほうがいいと思いますの」


『………』


「何？黙ってるなんて卑怯じゃない！」


『………ですか』


「は？もっと大きい声で言いなさいよ」


「聞こえないですわよ？」


『言いたい事はそれだけですか』



私はこの人達に何の恨みもない。
だけどやらなければならないのは私がそういう職であるから。
同時に2人を、なんて事は今までやったことはないが
なるべく叫ばれる前に仕留めなければ。

そうして私は、彼女らの首元に視線をやり軌道を頭で描く。



「何よあんた‼︎そんな偉そうに‼︎」


「わたくしたちを誰だと心得ますの⁉︎」


『…すみません。私も仕事があるので。』



ナイフを素早く取り出すと、ズシュ、と彼女らの首元を切った。
膝から崩れ落ちる2人。激しく飛び散る液体。

私はただただ眺めていた。

ああ。この感覚だ
切っても、何も感じない。
寧ろ煩かった声がなくなってスッキリすらしてる気がする

…もう、私は人ではないのかもしれない



『……着替えないと。』



無感情のまま、私は部屋を出た。

幸いにも自室に向かう途中誰にも会わなかった。
自室に着けば取り敢えずシャワーを浴びて
着替えを早々に済ませ、依頼完了のメッセージをボスへ送った。



『………』



ふと時計を見ると
自由時間と言われてから55分が経過していることに気付いた。

戻らないと。

そう思うのに、動く気になれなかった。


原因は恐らく、今感じている、この罪悪感だろう。

私は、この城で、
きんとき様たちが守るこの城で、人を殺めた。

依頼だから、仕事だから。と、今までだったらそれが普通で、遂行した後も特に問題はなかったはずなのに。


今は、きんとき様に会うのが、怖く感じる。


きっと彼女らが発見されるのは時間の問題だ。犯人もすぐ炙り出されるだろう。
彼は、私の本性を知ったらどう思うのだろうか。

きんとき様が私を心底信じてくれているからこそ、とても不安なる

勿論いつかはバレるものだと覚悟はしているし、失望されるものだと思ってはいるけれど。



『考えたって、もう戻れないのにね』



馬鹿だな。私は。

独り言のようにそう呟くと、
私は重たい身体を動かして自室を出た。



.

５７→←５５

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す