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「…って、強引過ぎるかな」
ごめんね、ときんとき様は私の頬から手を離す。
謝らなければいけないのは私の方なのに。
私は彼にいつもこんな顔をさせている。
『…いえ。』
専属という立場でありながら
隠し事が多いなど余計に疑われてしまわれそうだけれど
こればかりはどうしようもなかった。
あまり踏み込んではいけない。
仲を深め過ぎればバレた時のダメージが大きくなってしまう。
私が食らう分には、問題ないけれど。
「そうだ」
『…?』
「明日のパーティーの事なんだけどさ、」
『あ、私は周囲の警戒や監視、ですよね』
「あぁ、うん。そうなんだけど…」
『他にも何かありましたか?』
「Aも、ある程度は自由にしてて良いからね」
『…自由に、ですか?』
「うん。Aこういうの初めてでしょ?
折角だし、楽しんで欲しいから。」
楽しめるかわかんないけど、と苦笑いを浮かべる彼は変わらず優しいままだった。
こんな専属にまでそんな気遣いなどしなくていいのに。
『善処します』
「ん、何かあったら呼んでね」
そう言って彼は私の頭にポンっと手を乗せた。
自然にやってのけるその動作は慣れているものなのだろうか。
…まぁ、
幹部ともなれば、女性関係に困る事なんてないんだろうな
なんて。
自爆するようなことを考える。もしかしたら馬鹿かもしれない。
*
*
*
次の日。訪れたパーティー。
私は警備の為、会場の隅で視野を広げていた。
辺りには綺麗且つゴージャスで高そうなドレスやスーツ、飾りを見に纏った貴族のご令嬢達やいかにも偉そうな人達がわんさかといて、グラスを片手に料理や会話を嗜んでいる。
それにしても
この数の中ターゲットを探すのがキツ過ぎる。
私はあくまで警備の身。
貴族達に聴き込みなど絶対に出来ない。
依頼者もターゲットの写真くらい情報として提供してくれたらいいのに。
はぁ、とため息をつけば
私はひたすらにターゲットを探すべくご令嬢達を観察した。
暫くすると、ある人物が私の側で息抜きをしにきた。
「A〜」
『…あんま馴れ馴れしく呼ばれると困る……困ります。』
そう、彼。ぶるーくだ。
彼は私の存在を認識したあの時から頻繁に近寄ってくるようになった。
それも周りを気にしていなさそうな感じで。
困る。非常に困るのだ。
2人きりじゃないときは私は敬語にしてるのに
彼はそれが嫌なのかいつも駄々をこねる。
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ゆー(プロフ) - 伊達猫さん» 素敵なコメントありがとうございます‼︎ぜひ最後まで楽しんで下さいませ! (2022年6月2日 0時) (レス) id: ad479b9abd (このIDを非表示/違反報告)
伊達猫(プロフ) - 新作おめでとうございます!初コメですが、krさんの小説から来ました!またテイストの違う内容なので、これからが楽しみです!頑張ってください! (2022年5月29日 6時) (レス) @page4 id: f609931830 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆー | 作成日時:2022年5月29日 3時