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「ねえ、A怒ってるでしょ」



自室に辿り着けばガチャンと雑にドアを閉めた私に彼はそう聞いた。
僕何かした?とでも言いたげな顔をして此方を見ている。
そんな彼に私は一つため息をついた。



『……怒ってないよ』



彼と出会ったばかりの、あの頃と同じようなトーンと話し方。
自分で発するものなのになんだか懐かしく感じた。



「なら良いんだけど」



そんな私の口調に彼も懐かしさを覚えたのか
先程とは違って優しい眼差しを向ける。

どちらから喋るわけでもない。静まり返った部屋。

何を考えているかなんて何となくわかる。
だって、彼は、
短い期間ではあったけれど、ボスの元にいた3ヶ月間、私の相方として一緒に依頼をこなした仲だったのだから。

戦いの仕方、呼吸までも、相性が抜群だと言われた程だ。


そんな彼が今思ってる事を当てよう。
彼はきっと、待ってる。

私が何があって此処にいるのか

自室に来る前に質問されていたが
恐らく彼は"私から"話をするのを待ってるんだ。
自分になら問い詰めなくても話してくれる、そう思ってる。


だけど、
彼はもうこちら側の人間じゃない。

暗殺者は秘密主義。それは絶対的なもの。
だから言うつもりもなければ言えないのだ。



『此処にいる理由は言えないよ。
………ルックなら、その意味、わかるよね?』


「…………そっか。うん。そうなんだ。」



これ以上の言葉は要らなかった。
彼は全てを理解したかのように何かを悟っている様子だった。

そして子供のように、あの頃のように、聞いてくるのだ。



「またAと仲良くしても良いの?」



"また"
今は立場が違う人間同士。だけどそれでも、彼は私とあの頃のように過ごしたい。ということだろうか。

例えルックの望みだとしても、私は安易に答えを出せなかった。

誰かに、怪しまれるかもしれない。
それにルックは…ぶるーく様は、幹部の一人。
強い絆で結ばれたこの国の6人組の一人。

裏切り者の私を売ることなど容易い。

勿論、そんな事をする奴じゃないのは私が一番よく知ってる。


だけど、彼は頭が良い。
あの頃から8年も時は経っているし、
彼の中で大切なものがある限り、それを守る為に尽くすだろう。

つまり、私は売られてもおかしく無いのだ。


でも、

それでも……




『………良いよ。』




私も、望んでしまった。
あの頃の自分に、まだ純粋で、感情が残ってた時期に、



戻れるのかもしれないと。


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作品ジャンル:恋愛
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ゆー(プロフ) - 伊達猫さん» 素敵なコメントありがとうございます‼︎ぜひ最後まで楽しんで下さいませ! (2022年6月2日 0時) (レス) id: ad479b9abd (このIDを非表示/違反報告)
伊達猫(プロフ) - 新作おめでとうございます!初コメですが、krさんの小説から来ました!またテイストの違う内容なので、これからが楽しみです!頑張ってください! (2022年5月29日 6時) (レス) @page4 id: f609931830 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆー | 作成日時:2022年5月29日 3時

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