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「これで眠れそう?」




彼の声が耳に響く。距離が近い。近すぎる。

口調と声色からして
彼はきっと良かれと思って、私を思ってこの行動をしただろう。

眠れるか眠れないかなど、
今の私には考える隙もなくて

ただただ男の人の身体に自身の身体がこんなに密着していることに胸のザワザワがおさまらなかった。




『だいじょうぶ、です』




振り絞って出した声は、いつもの私とは別人の様な声。

だけどそんな事よりも
私の心臓の音が聞こえていないか、とか
まるで恋する乙女の様なことを考えている自分がいる事の方に驚きが隠さないでいた。





「…嫌だったら嫌って、言った方がいいよ」





そう言いながらも
彼は先程よりも身体を密着させ、私のことをぎゅーっと、優しく抱き締める。

不思議なことに、嫌、なんて思いは一切なく、
どちらかというとドキドキと鳴る心臓がきゅ、と苦しくもあって。
慣れない感覚にどうしたらいいのかわからないのだ。

私はぎゅ、と力なく彼の寝巻きを握った。





「そういうのさ…勘違いしちゃうから」





声色でなんとなく、きんとき様がどんな表情をしているのか想像ができた。
彼は自分でした発言を打ち消すように私を抱き締め、はぁ、と息を吐いた。





『すみません、』





私にはそれしかいえなかった。
これだと失礼かもしれない、と別の言葉を探しに探す。





『ですが、お陰で眠れそうです。』





探した結果、出て来た言葉はこれだった。

本当に自分でも何を言っているのだろうと思う。
だけど、
人の温もりに触れる感覚が、あまりにも心地良すぎて
このドキドキ感やそわそわする感じさえも
とても大事なものに思えて仕方がなかったのだ。


眠れなくなったのは彼の所為だったはずなのに、

高鳴る心臓が煩いのも、彼の所為だったはずなのに、

彼のお陰で眠れそうになるなんて、おかしな話。




それに、
他人の前でこんな無防備に身体を預けている姿なんて
誰にも見せられないだろう。





だけど、

今日は、本当によく眠れそうだ。





私の意識は、
深い深い眠りへと誘われていった。











朝目を覚ますと、
今までにないくらい清々しい気持ちだった。

こんなにも質の良い睡眠を取れたのは何年振りだろうか、と思うくらいに。

隣には勿論彼がいて、
寝る前と同じように私を抱き締め目を瞑って寝息を立てている。



そんな彼を見て自然と口角が上がっていることは無自覚だった。



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作品ジャンル:恋愛
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ゆー(プロフ) - 伊達猫さん» 素敵なコメントありがとうございます‼︎ぜひ最後まで楽しんで下さいませ! (2022年6月2日 0時) (レス) id: ad479b9abd (このIDを非表示/違反報告)
伊達猫(プロフ) - 新作おめでとうございます!初コメですが、krさんの小説から来ました!またテイストの違う内容なので、これからが楽しみです!頑張ってください! (2022年5月29日 6時) (レス) @page4 id: f609931830 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆー | 作成日時:2022年5月29日 3時

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