いるかとくらげの乱高下。【イナズマイレブン】 (ページ4)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:4,573 hit

33.00 ページ4

あれからどれほど時間が経ったのだろう。

何をするべきか目を閉じて考えていたらまた寝てしまったらしい。

私は代表に選ばれてから眠るのが得意になってしまったのだろうか。

周りを見ると、私はあの海の中だった。

(あー、またか…………)

今日で来るのが3回目となる海底で、一人ため息をつく。

そのため息でさえも泡になって海面に登って行った。

(声、また出ない)

豪炎寺さんの離脱の時と同じ様に、私の声は全く出ない。

叫んでいるつもりでも、全て泡になって消えていく。

その繰り返しの中で、私は1つ違和感を覚えた。

それ(・・)は黒い塊だった。

イルカの群れの中に、1つ黒い塊が混ざっている。

周りのイルカ(かれら)は全く気づいていないようで、気にせず同じスピードで進んでいく。

それはそうだろう、前しか見えていないイルカ(かれら)に、1番最後方でこちらの様子を伺っている黒い塊(それ)に気づくはずがない。

きっとイルカ(かれら)の上に乗っている私にしか見えないだろう。

よく見ると、黒い塊(それ)には少し赤い血のようなものがついている。

私にはいったいそれがなんなのかわからないが、得体の知れないそれは私に恐怖を覚えさせるのには十分だった。

「皆、逃げ………………」

そこまで言ってハッとした。

そうだ、私の声は届かないのだ。

ならば、どうすれば……………………？

目の前がチカチカする。

意識が海流に呑まれていく。

声を出すどころか息をすることもままならない。

ダメだ、イルカ(かれら)に伝えなくては―――――――――、

眩む世界の中で、黒い塊(それ)は小さく笑った。

本当に小さく、ひっそりと、ひどく悲しげに。

その笑みに、わけも分からず口をついて出た言葉がある。

「きっと、貴方も助けてあげるから！」

その言葉の後、私の意識は完全に海流に呑まれてしまった。