錬金術師9 ページ10
｢ていうか、また誰かに嫌われるようなことしたの？｣
呆れたようにため息をつき、Aにジト、という目を向ける寧々。
｢まぁ、ちょっとね・・・｣
バツが悪そうにAは目を逸らし、頬をかいた。
｢寧々は東雲 彰人くんという人物は知っているかな？｣
先程の出来事を寧々に伝えたくて、僕は東雲くんの名前を出した。
これでまたAに意地悪が出来そうだね。ふふ、楽しいな。
｢東雲・・・。ああ、あのオレンジ髪の人？｣
同じ学年だからか、やはり寧々は知っているようだ。あ、そういえば寧々は青柳くんと同じクラスだったかな。
｢まて類、それ以上言うんじゃない。私はこれ以上寧々に引かれる訳にはいかないんだ｣
｢ふふ、何を言っているんだい、美沙希。今更じゃないか｣
何故か焦っているAに疑問を抱きながらも、いつものように軽口を叩いた。
・・・なんだか、引っかかっている気がするんだけれど。
気のせいかな。
｢ほんと。変な冗談言わないでよね｣
｢幼馴染が辛辣すぎて辛い｣
朝と同じように泣き真似をしているAを横目に見ながら、僕は続きを話す。
東雲くんの前で猫を被っているという情報を出したら、寧々はなんて言うかな。
寧々なら東雲くんの前では猫を被れるように、協力してくれるのかな？
｢そのオレンジ髪の東雲くんに嫌われないように、どうやら猫を被っているみたいなんだ｣
｢・・・ああ、そういう事。つまり美沙希はその東雲って言う人のことが好きなんだね｣
・・・・・・・え。
・・・”好き”？
寧々が発したその言葉に、僕の頭は真っ白になった。
けれど同時に、どこか腑に落ちた部分があった。
・・・そうか、さっきから感じていたこのモヤモヤは。胸の引っ掛かりは。
・・・そうか、そういう事だったのか。
｢でも先程、ついつい素が出てしまったみたいなんだ｣
泣き出したい気持ちをグッと堪え、言葉を紡ぐ。
・・・駄目だ、下手に喋りだしたら泣き出してしまいそうだ。喉の奥がムズムズする。
横でいつも通り話している2人の会話を聞き流しながら、僕は。
・・・相手は、東雲くんか。
・・・はは。
｢・・・ダメだなぁ｣
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