錬金術師2 ページ3
｢じゃあ逆に聞くけど、あんの？いい事｣
｢ないだろうね｣
｢流石に酷すぎないか？？？？｣
2人して私をいじめるんだ！！と顔を覆って大声で泣くふりをするA。真似が下手すぎて近くで犬の散歩をしていたおじいさんにも、なんなら犬にも変な目で見られていたよ。恥ずかしいからそろそろやめてくれないかな。
｢・・・あるよ、私にだっていい事｣
やっと下手な泣き真似をやめたかと思ったら、開口一番にAはそう言った。
｢へぇ、どんな事だい？｣
きっと、｢・・・学校に着いてからのお楽しみかな！！｣みたいな感じで誤魔化すんだろうな。
少し意地悪をしよう、なんて軽い気持ちで聞いたのが間違いだったらしい。
｢そうだなぁ、詳しくは言えないけど・・・｣
｢ある人に会えること、かな｣
｢・・・え｣
声、と言うよりかは、息を発した僕の唇は、少し開いたまま動かなかった。
口内が少しずつ乾いていく。手に、額に、じんわりと汗の滲む感覚。
・・・それって、つまり。
｢・・・ね、ねぇ、それって｣
動揺で何も出来ない僕に代わって、寧々が聞いてくれようとした。
僕達は幼馴染だから。きっと、話してくれる。
もっと知りたい、という気持ちと、聞きたくない、という気持ちが混じりあって、僕の感情はもうぐちゃぐちゃだった。
それでも、Aが話してくれると、そう信じて。
｢幼馴染といえど恥ずかしいもんだね・・・。この話は終わり！｣
しかし、そんな僕の思いとは裏腹に、君はそう言って。
今まで見たことの無い、恥ずかしそうな、けれど幸せそうな表情で、笑いかけてきた。
・・・嗚呼。
プツリ、ちぎれて行く。
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