捨陸 大きな口とバアムクーヘン ページ29
最初に感じたのは水が頬を伝う感覚
小さい手そして高い声
私は寝っ転がっているようで、背中には砂の感覚
気温は高いが日本と違い、湿度は低いのか言うほど暑いとは思わない
またか
前回酷い目にあったのだからそう思っても仕方が無いと思う
一度大きく深呼吸をする
潮の香りとミスマッチな甘い香り
花や果実ではない砂糖のような歯が溶けてしまいそうな香り
遠くの方で子供達が元気に遊ぶ声がする
何故彼らが調味料や料理器具でお互いを呼んでいるのかは知らない
名前なんだとしたら個性的すぎるのでは？
少なくとも私だったら絶対に改名する
別に馬鹿にしてる訳じゃないよ
私は嫌だってだけ
にしてもずーーーーっと私の顔を触るの辞めてほしいんだけどなぁ
布面は律儀に外さずに手だけ面の中に入れて顔のパーツを確かめるように優しく触られる
控えめに言って鬱陶しいくすぐったいし
何付き合いたてのカップルみたいなことしてんの？は？
「ペロス兄ー！！！！あーそーぼー！！！！」
え？？？
え？？？？
ペロス兄？？？
ペロスペロー君？？？
嘘だと言ってほしい
いや、別の顔も知らない奴に触られたくなんてないけど…
んー？？？
前よりだいぶ大きくない？
数日…いや、数年経ってる可能性があるのか
あのお兄さんもそう言ってたし
指細いな
この間はぷくぷくして可愛かったのに…
あと向こうの方で遊んでいるのは件の弟達かな？
赤子なのにドーナツに興味津々だったとか
「…なぁ、いつまで寝たフリをするんだ？」
気付いていたのか…
顔見えないしばれないと思ってたのになぁ
《バレた？》
「そりゃな、手を口に近付けると甘噛するだろ？」
？？？？？？？？？？
甘噛？？？
私が？冗談だと信じたい
幼児のように他者の指を噛んでいるなんて
「俺は嘘は行ってねぇぞ」
これは起きたらすぐばあやに聞かないと不味いのでは？
《信じたくないなぁ》
「現実なんてそんなもんだろ？」
《君まだ片手で数えるくらいしか生きてないだろう
そんな事言うもんじゃないと思うよ》
少し拗ねるように彼は私の頬をつつく
彼の母親はきっとあの時から変われていないのだろう
にしても君海賊だったのね
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作者名：ぽにょぺにょん | 作成日時：2021年10月10日 18時
