捨弐 ページ25
次に目を覚ませば痛みは和らいでいた
まだ全身は痛むが、動けないほどではない
声も出ない
日はもう落ちているから丸一日私は眠っていたのかもしれない
「おはよう御座います」
《ばあや？》
手を握られているのに気付かなかった
「はい。声は出せますか？お体の方は？？」
《声は喉が痛くてあんまり出ないかな
体は一応動くけど、かなりキツイ》
「そうですか…食欲は？」
少しそっけなく見えるけど、私の手を握る力は強くなった
心配をかけてしまったみたい
《あるよ、胃袋がすっからかんだ》
「それはそうでございましょう
なにせ貴方様は丸3日お目覚めにならなかったのですから」
冗談だと思った
けど、この口調と雰囲気のばあやは冗談は言わない
丸3日食事をしていない
ということはステーキを食べられない…？？？
ん？？？
私、今バター醤油のステーキを白米で食べたい気分なんだけど…
コンソメスープとコーラなんかつけてさ
そしておやつには麦茶に煎餅を食べたいんだけど…
え？無理ってこと…？
「ばあやはサトリではございませんから、相手がどんな事を考えているかはわかりません
ですが、暫くは体に優しいものがよろしいかと」
わかってると思うのだけど
私がおかしいんだろうか？
ばあやは敵に回してはいけない
「そんな事よりお嬢さん、夢で一体何をなさったんですか」
さっきより明らかに不機嫌で冷たい声だった
怪我はしたけど、それがどうかしたんだろうか
ただの怪我でばあやがここまで怒るなんてありえない
なら何故…？
とりあえず私はすべて包み隠さず話す事にした
嘘がバレたら本当に不味い
きっと私に明日は来ない
そのくらいばあやは怒らせるとヤバい
海賊船に乗って、子ども達の世話をした事
子供が好きになった事
覚えている事全部
「お嬢さん、子供好きになったと…」
《そうなんだよばあや
とても成長出したと思わない？》
ばあやは考えこむように黙り、呆れたように答えた
「そうですね。というより、お嬢さんは弟様方以外の子供は元々好きだったようにばあには見えました。それを自分でも理解しただけでは？」
豆鉄砲を食らった気分とはこの事を言うのだろう
…ペロスペロー君には確かに絵本をあげたりした
私の中では情報を貰ったからその報酬とばかり…
「その子と触れ合っても嫌な気分ではなかったのでしょう？」
私は自分が思っていた以上に成長していたようだ
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作者名：ぽにょぺにょん | 作成日時：2021年10月10日 18時
