陸 ページ12
意識が暗転した後、嗅ぎ慣れたお香の香りがする
ああ、夢から覚めたのだと分かった
朝のような頭痛は無いし記憶も残っている
メモの方はミミズのような細く、複数の線が重なった解読不可能になっていてとてもでは無いが読めそうにない
時間は午後2時半
今から起きればお茶の時間に丁度いい
起きてすぐに物を食べるのは良くないとばあやが言っていた
「ばーあやー？何処ー？」
そう声を出せば、ばあやが戸の前から声をかける
私の言語技能に問題がある訳ではなさそうだ
「いや、特にこれと言ってお前に急用という訳ではないんだけど、調べて欲しいものがあるの」
「調べて欲しいモノ…ですか？？？
珍しいですね、なにか御座いましたか？」
「件の夢。あちら側のモノノ怪とさっき会ってね、 興味深い話を聞いたんだ
向こうに居るべき存在が此方に鑑賞しすぎると帰れなくなる
…と、だから」
「異界に関する文献を探し、此処へ持って来い…というわけですね？？」
「流石だねばあや、話が早くて助かるよ」
やれやれと言わんばかりの態度でばあやは部屋の外へ出る
私がいつも急に難しい事を頼んだりするからばあやはこういうのは慣れっこだ
何も言わずとも明日には中間報告か結果報告をしてくるだろう
ばあやは優秀だ
だからこそ私のような化け物を押し付けられる
さて、いい加減長布団を仕舞わなくては
私は良い所の子供だが、自分の事は自分でやる
布団をしまうのも服を洗うのも干すのも…全て
悪い事をしたら平気で殴られるし説教される
殆どがばあやの指示だ
これのおかげで私はあまり自分は偉いんだとえばり散らさなくてすんだ
兄や姉に限らず、私の実家の人間は自分は本家の者だと分家の人にえばり腐っている
本家に生まれたからなんだと言うんだろうか
反吐が出る
私には一部を除き、本家の人間が醜く蠢く虫以下の存在にしか見る事ができない
自分もああなっていたかもしれないと思うと寒気がする
同じ一族だと言うのに何故下に見るのか理解に苦しむ
はぁ…どうにもペロスペロー君の甘い香りが鼻から抜けない
まるで 忘れないで と言われているような気さえする
私は気を紛らわせる様に近くにある人形を抱きしめる
昔ばあやに夜寂しいと泣いた日によなべして作ってくれた私の妹
服から懐かしい香りがするふわふわのかわいい子
私はああゆう子供には弱いんだ
辞めてほしいよ…本当に
自分に重ねてしまうだろ？？
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作者名：ぽにょぺにょん | 作成日時：2021年10月10日 18時
