届かない独り言 ページ15
〜shima side〜
鍵の架かっていない無防備な部屋の扉をあけた。
ベッドには、顔を赤く染めて眠るA。
椅子を引っ張ってその隣に腰を下ろした。
そいつの唇は少し開いていて、熱い吐息が漏れていた。
柔らかそうやな
そう思った時にはもう手を伸ばしていた。
寝ているそいつの下唇を人差し指でつついてみる。
予想通り柔らかくて、病みつきになりそうだった。
つついてみること数十回。
指先を、ﾁﾛｯと舐められた。
見ると、Aが目を開けている。
「お、起きたん？」
「…まーしぃが邪魔した」
「……悪ぃ」
「ふふ、嘘。ちょっと前から起きてたよ」
「なんやねん」
意地悪してやろうと思って、舐められた指先を今度は自分で舐めた。
わざとらしく、リップ音を響かせて。
「これで間接キスやな」
「……まーしぃ」
不意に手招きされて、顔を近づけると、唇に、ふに、っと何かが当たった。
「これで直接キスやな、」
俺の真似をした関西弁で、Aはふふ、と笑った。
「て、め…俺のファーストキスをｯ……」
顔に熱が集中してきて、口を手で押えた。
「私じゃ、だめだったの？」
眉を八の字にさせてそう言うから、ますます顔が熱くなる。
「……まぁ、私はセカンドキスなんだけど。」
「っは？」
「初めては、さかたんに取られた。キスされてからの記憶が無いけど、」
あの野郎……
「……俺かてお前のファーストキス欲しかったわ」
「…………ねぇ、丸聞こえだけど、」
「うっさいなぁ！！」
「へへへ、まーしぃリンゴみたい、」
「お前に言われたないわ」
「Aって呼んでよ、」
「……A、」
控えめに呼んでみた。
でも、いくら待っても返事がない。
……寝てる。
「はぁ……ほんまずるいて、」
誰にも届かない独り言は高い天井に消えていった。
〜shima side end〜
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ての(プロフ) - Naoさん» ありがとうございます！頑張りますね、！ (2019年11月21日 22時) (
レス) id: 8747774e09 (このIDを非表示/違反報告)
Nao(プロフ) - 今までのアルバムのソロ曲の歌詞が出てきて、その歌詞のおかげでどんな状態なのかもよくわかって、すごく読みやすいし、面白いです！更新頑張ってください！応援してます！ (2019年11月21日 16時) (レス) id: b92cb2f456 (このIDを非表示/違反報告)
ての(プロフ) - ミトさん» 嬉しいです！ありがとうございます！ (2019年11月18日 23時) (レス) id: 8747774e09 (このIDを非表示/違反報告)
ミト - 初コメ失礼します。 読んでいて、すごく面白かったです!続き楽しみにしてます。 (2019年11月18日 23時) (レス) id: d0ac5e5cac (このIDを非表示/違反報告)
ての(プロフ) - Naoさん» 気づいて頂けて嬉しいです、ありがとうございます！ (2019年11月18日 22時) (レス) id: 8747774e09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ての | 作成日時：2019年11月17日 21時
