乗り越えればなんとかなるモンよ ページ8
(────あれ、なんで私沈んでんだ……？)
遠くなる水面を見つめ、そうか、とすぐに合点がいく。私は走り回った挙句、自分でも気付かぬうちに池にたどりついて、どうやらそのまま落ちたらしい。
なんとか池から浮き上がって、顔を出す。凶悪な面をひっさげてる虎が、池の淵で立ち止まっているのが見えた。虎も水の中まで追う気はないのだろう。物惜しそうな顔をして、虎は背を向けて消えていった。
『っはぁ〜〜〜……よかったぁ……』
池から這い上がった私は濡れた服をしぼりながら、本当に心の底からの安堵の息を吐いた。猛獣に襲われるなんて経験は今しか出来ないね。死ぬほど嬉しくないけど。
『もう一生虎は見たくないな……』
そう呟いてから、切り替えるように頬を叩いて立ち上がった。
空を見上げてみると、さっきまでは青かった空が薄くオレンジがかってきている。こりゃマズイな。食べ物も全部逃げる時に捨ててきちゃったし、今森に入るのは精神的な話の上で誠によろしくない。また虎にあったら私は恐怖で走れないぞ。
水源は見つかったが、食料問題は降り出しだ。どうしたもんか。
そう思い悩んでいた時、不意にあるものが視界に入って、堪らず私は歓喜の色を浮かべた。神はまだ私を見捨てていなかった！
なんと池から少し離れた場所に、洞窟らしき場所があった。蔦や植物で隠れていて一見分からなかったが、ずっと奥まで空洞が続いているのがわかる。恐ろしく自然に溶け込んだ洞窟…オレでなきゃ見逃しちゃうね。
『これで水も雨風の問題も解決した……！あとは食べ物だけだ！』
池のそばとなると、探せば食べれるものは近くにありそうだ。虎は怖いが、餓死するのも嫌だ。ここらでもう一度、気張っていかなければ！
────それから日は沈み、あたりはすっかり夜闇に包まれる。
あれから夜が来るまで、食料は何とか集まった。たくさんとまではいかなかったが、一晩凌げるくらいの量は確保できたので上々だ。道中もヘビや虫はいっぱいいたけど、幸い、虎に遭遇することはなかった。
明日の朝日は無事に拝めそうで何よりだ。
『ふぅ…ごちそうさまでした』
果実だけの夕食だったが、胃が小さいのか、それだけでも十分お腹は脹れた。洞窟の硬い床…というか地面に寝転がって、真っ暗な洞窟の天井を見つめながら思案する。
考えることはたったひとつ。
今の私について。そしてこの状況についてのことだった。
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AG2(プロフ) - うぇさん» ありがとうございます！可哀想は可愛いの裏返しですからね❤︎ (2022年8月30日 13時) (
レス) id: 824802fbf5 (このIDを非表示/違反報告)
うぇ - 主人公…、強く生きろよ…いや好きですけど好き！！！ (2022年8月29日 17時) (レス) @page49 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - ニアさん» ありがとうございます！やっぱり幸せなだけじゃ物足りないですよね^ ^これからもじゃんじゃん不幸にしていきます！！ (2022年8月24日 7時) (レス) id: 824802fbf5 (このIDを非表示/違反報告)
ニア - これは主人公が幸せになろうとする度に不幸が襲ってくるパターンのタイプだ……リゲルが死んだところでちょっと泣いちゃった...とても面白くて読みやすい小説でした！！！ (2022年8月23日 23時) (レス) id: 6103ddda9f (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - おこげさん» ありがとうございます！これからもどんどん主人公を可哀想な目に合わせていきます！頑張ります！ (2022年8月18日 10時) (レス) id: 824802fbf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハラマゲオ | 作成日時：2022年8月6日 23時
