月の下の三つの灯火 ページ20
このリゲルという男は、少女にとって酷く奇異なものにうつったが、それはまた彼にとっても同じで、こんな無人島に一人ぼっちの少女の存在は、リゲルからしたら異質そのものだった。
この少女はなぜこの島にいるのか。一体何があったのか。
荒い息を繰り返す少女の額にかかる髪を指で避ける。以前はきっと美しい黒髪だったんだろうが、その髪も今では白髪が多く混じってしまっている。親譲りなのであろう端正な顔も、すっかり痩せこけ、青白い。
だが、それも少女にとっては命の代価だったのだろう。彼女の全身にある擦り傷や痣、血の滲んだ指先を見ていると、この少女の苦難が痛いほど伝わってきた。
それでも、子供がこんな島によく一人で生き残れたものだ、と感心すらした。この少女は幼さに見合わずとても賢い。リゲル自身がこの少女と同じ境遇に置かれれば、三日と経たずに死ぬ自信があった。
頑強で、知的で、そしてなんて立派な子供だろうか。
空が暗くなってきたので、焚き火をつけるため、一度少女の元から離れて洞窟を出る。
「！………まるっきり独りぼっちってわけでもなかったのか」
洞窟の外には、いくつかの果物が丁寧に置いてあった。辺りを見回すが、人の気配はしない。どうやら彼女には、ジャングル住みの友人がいるらしい。
リゲルが火をおこした時には、既に日は沈んでいた。
洞窟に戻れば、少し震えながらも少女は起きていた。今になって気付いたが、少女の瞳は太陽を閉じ込めたような橙色をしている。
「立てるか？寒いんなら焚き火の近くのがいいだろ」
『……はい、ありがとうございます』
これぐらいの歳で敬語を使えるとは、驚きだ。
少女は立ち上がって洞窟から出ると、焚き火を目にして、泣いた。リゲルには気付かれたくないのか、ただ静かに泣いていた。
とはいえ、リゲルはあまり空気が読める質ではない。「泣いてんのか？」と人のデリケートな部分にズケズケと足を踏み入れる。
『な、泣いてない…』
「いやどう見ても泣いてんだろ」
『だ、だって……綺麗だから……』
少女は、炎の美しさに泣いていた。何もかもを焦がすようなその熱さに、涙が抑えきれなかった。
ボロボロと、鼻水すら出して、号泣する。ずっと心細かった。暗闇が怖かった。一人の時間が恐ろしかった。
途切れ途切れに告げる少女の言葉を、リゲルは時折軽口を叩いて聞いていた。
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AG2(プロフ) - うぇさん» ありがとうございます！可哀想は可愛いの裏返しですからね❤︎ (2022年8月30日 13時) (
レス) id: 824802fbf5 (このIDを非表示/違反報告)
うぇ - 主人公…、強く生きろよ…いや好きですけど好き！！！ (2022年8月29日 17時) (レス) @page49 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - ニアさん» ありがとうございます！やっぱり幸せなだけじゃ物足りないですよね^ ^これからもじゃんじゃん不幸にしていきます！！ (2022年8月24日 7時) (レス) id: 824802fbf5 (このIDを非表示/違反報告)
ニア - これは主人公が幸せになろうとする度に不幸が襲ってくるパターンのタイプだ……リゲルが死んだところでちょっと泣いちゃった...とても面白くて読みやすい小説でした！！！ (2022年8月23日 23時) (レス) id: 6103ddda9f (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - おこげさん» ありがとうございます！これからもどんどん主人公を可哀想な目に合わせていきます！頑張ります！ (2022年8月18日 10時) (レス) id: 824802fbf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハラマゲオ | 作成日時：2022年8月6日 23時
