兆し ページ11
「ウキ、ウキキッ」
『うん……？』
今日も今日とて絶望に明け暮れていた私の元に、何故かいつかの泥棒猿がやってきていた。私を死んでいるとでも思っているのか、猿は容赦なく頬を叩いてくる。ちょっ、痛、マジで痛いのやめろ。
『いてて……なんだよ、果物でもせびりにきたのか…？好きなだけ持っていっていいよ……』
うんざりしながらも寝転がっていた私は体を起こして猿の方を向き、そして驚いた。なんと猿の傍らに、革のスーツケースがあったのだ。
『なっ…お前、なんだそれ！持ってきたのか！？』
「ウキッ！」
猿はお礼です、とでも言うように、私の前にそのスーツケースを持ってくる。なんでこんなものを猿が……。いや、今それはどうでもいい。このスーツケースは一体何なのか、そしてその中身(ぶっちゃけこっちが本題)が重要だ。
長らく死んでいた心が、少しずつ息を吹き返してきた気がした。
「ウキッ！キキキッキ！」
『早く開けろってか？分かったから、ちょっと待てって』
早速開けようと金具に手をかけるが、金具は見事に錆びていた。これじゃ開けらんないな……。
手頃な石でなんとか金具を壊して、ついにスーツケースが口を開ける。
『箱の中身はなんじゃろな…できればサバイバル道具一式とか…』
「ウキキッ！」
なんとも贅沢な願望を口にしながら中身を見て、私の口からは『は？』の一言しか出なかった。
『何これ……手紙と、紐？えっ、これしか入ってないの？マジ？』
いかにも「いいもの入ってますよ」と言ってるような見た目のくせして、入っていたのは白と黒の便箋二つと、もはや中に混ざりこんだゴミかと思うような一筋の赤い紐だけだった。
なんだこのゴミ箱、と言い捨てたくなったが、猿公があまりに切実な顔をしていたのでさすがにそれはやめる。私の良心が痛むので。
『にしても、なんだこの手紙…。蝋封って今でもあるんだなぁ、初めて見た』
ひとまず読んでみるか、と白い方の便箋を手に取る。
蝋封はどうやって剥がすのか分からず、結局は破ってしまった。まあいいか、と中身を取り出して、封筒はその辺に置いておく。
「キキッ、ウキ」
『あ、こら、口に入れるんじゃないぞ』
猿公にそう釘を指してから、私は手紙の中身に目を通してみることにした。
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AG2(プロフ) - うぇさん» ありがとうございます！可哀想は可愛いの裏返しですからね❤︎ (2022年8月30日 13時) (
レス) id: 824802fbf5 (このIDを非表示/違反報告)
うぇ - 主人公…、強く生きろよ…いや好きですけど好き！！！ (2022年8月29日 17時) (レス) @page49 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - ニアさん» ありがとうございます！やっぱり幸せなだけじゃ物足りないですよね^ ^これからもじゃんじゃん不幸にしていきます！！ (2022年8月24日 7時) (レス) id: 824802fbf5 (このIDを非表示/違反報告)
ニア - これは主人公が幸せになろうとする度に不幸が襲ってくるパターンのタイプだ……リゲルが死んだところでちょっと泣いちゃった...とても面白くて読みやすい小説でした！！！ (2022年8月23日 23時) (レス) id: 6103ddda9f (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - おこげさん» ありがとうございます！これからもどんどん主人公を可哀想な目に合わせていきます！頑張ります！ (2022年8月18日 10時) (レス) id: 824802fbf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハラマゲオ | 作成日時：2022年8月6日 23時
