アイノチカラ

貴重、再び… ページ7

俺の知らない君を知った時
なんでこんなにもソワソワしてしまうんだろう…
今まで出会ったどの女性とも違う
君は…一体何者なんだ

****

A「Oui... Je travaille sur l'horaire comme je vous l'ai dit l'autre jour.」

事務所で見かけることが多くなった。というのは俺の気のせいで、本当は以前からこれぐらい遭遇してたのかもしれない。

HS「…あれ何語？」

WN「フランス語」

JS「この間僕、英語で彼女と話したよ。すごく聴き取りやすいQueen's Englishだったなぁ。しかも僕のアメリカ英語もちゃんと聞き取ってくれた」

電話でクライアントと話しているんだろう。流暢な外国語を話す姿は全く違和感がなくて“学がある”というのは彼女のための言葉のようだ。

WZ「…ふーん…」

「…ん？なんだよ？」

WZ「別にぃw」

俺の顔になんか付いてるのか？ニヤニヤしたり、見透かしたような顔したり…。

WZ「Aヌナ、マルチリンガルらしいよ」

JS「マルチ？」

WZ「英語・フランス語・イタリア語…あと北京語と日本語だったかなぁ」

なんでそんなこと知ってんだよ…
なんか…モヤっとする…

WZ「俺、Aヌナとは仲良いからw」

「はぁ？」

だから…なんなんだよ、そのしてやったりな顔は！

.

稽古が終わって、室長との面談までカフェで時間を潰す。会議が長引いてるとかで、俺はもう30分も待ちぼうけを食らっている。

[あー…早く帰りたい]

最近、富に忙しくなってきた。それだけ俺たちが人気になった、ということなのだろうか。分刻みのスケジュールに追加、追加…また追加。その合間を縫って、こうやって俺には事務所との対話の時間もあって…

[次の休み…いつだっけ…]

マルっと1日休めたのは、一体いつだっただろう…。そんなんことを考えていたら、俺の手元にホットカップが差し出された。

「⁉︎…コク次長…」

A「お疲れ様です。すみません、室長がお待たせしているようで」

「いや…あの…」

A「先日の“貴重”のお返しです。召し上がってください。と言っても、この時間なのでミルクティーですけど」

「深夜に大量のカフェインは避けた方が無難です」と、まるで俺を気遣うように…

「ありがとう、ございます…」

A「私の“貴重”です。では…」

「え…」

踵を返して去っていく後ろ姿。ヒールの足音は、やはり殆ど聞こえてこない。

[…勘違いするな、会社の人だ。気遣われるのは当たり前…]

そう考えると…
…何故か切なくなった…

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