表裏一体 さくこじ ページ24
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お互いの体温が上がりきった頃
有無を言わさずにスウェットを脱がせると
康二の、少し角張った肩に見覚えのない痣
…痣?
大『 なに、これ 』
康『 …ん、? 』
なに、イライラする。
なに、誰にやられたの?
なに、俺以外に触らせたの?
なに、どうやって付けられたの?
よくもまぁ、こんな色んな感情浮かぶわ
自分でもよく分からないまま、
康二のそれを目掛けて噛み付く
康『 …えっ、さ、っくん、?! 』
大『 答えろよ、なにこれ。 』
康『 いたっ、…痛いってば、ぁ! 』
大『 イライラさせないで 』
何回も、何回も何回も
上書きをして、俺の歯型を遠慮なくつけていく
急な出来事に、痛さと、あと多分、怖さ
ごっちゃになった康二は
半泣きで俺の肩を必死に押し返す
仰向けの康二の涙は、可愛い雫のまま耳に落ちた
康『 …ら、ラウっ、! 』
大『 ……はっ? 』
康『 ラウと、殺陣、練習してて、…っ、 』
大『 た、殺陣…? 』
そぉ…、なんて、震える声で必死に訴える康二
あぁもう…馬鹿だな、本当に。
この一言で、康二の優しさが
一気に全部頭の中に入り込んできた
康『 ら、ラウの木刀、肩で、受けてもうて… 、 』
今日の殺陣の練習中、
以蔵の個人練習に付き合ったあげたらしい官兵衛
あの極悪卑劣な盗賊の中には、
しんどいくらい優しい向井康二がいるのに
馬鹿な俺はすっかり、
それどころじゃなくなってしまっていた
大『 …こうじ…、…ごめん… 』
青じゃなくて、赤くなるなんて…
分かりにくいにも程がある。
必死に俺の腕にしがみついて、
ごめんなさいと震える康二を抱き締めた
伸びてきた襟足が頬に掠れて
本当に狼みたいなふわふわの猫っ毛を、
今できる精一杯の優しさを乗せて撫でる
大『 ごめん、ごめん康二 』
『 てっきり、俺以外と…、 』
康『 んな訳ないやろぉ…っ、 』
大『 うん、ごめん…痛かったね、 』
康『 …でも、… 』
大『 、ん? 』
康『 …これで暫く、さっくんの跡…消えへんな、 』
子供みたいに泣き腫らした潤目のくせに
その奥はユラユラと揺れていて
ゆるっと弧を描いたその唇は
それだけで確かに、小判でも命でもなく、
俺の何かを盗んでいった
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作者名:rui | 作成日時:2021年1月16日 10時