雪月花 III (ページ18)

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ふゆ、あさ、ゆきだてふかページ18

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昨日の夜に見た天気予報通り
東京の空から、静かに雪が舞っていた

辰『まじかぁ… 』

涼『傘、1本しかないよ、うち』

辰『だよな、まぁ、近くまで来てくれるって言ってたし、そこまで仲良く相合傘でもしましょうよ』

珈琲を啜りながら呑気に笑う深澤

ほんと、人が変わるんだから。
微妙に痛みを感じるお腹を摩ってため息をつく

辰『 …痛いの？』

涼『当たり前でしょ。』

『だからゴムしてって言ってんのに。』

辰『あはは、間に合わなかったのか、俺』

涼『 ……違う、朝からこんな話がしたいんじゃない… 』

辰『ごめんねえ？』

涼『早く支度して、』

全世界の人間が堕ちてしまいそうな甘い顔
やめてよね、それ、他でその顔するの。

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辰『あー！無理！さっっむ！！』

涼『 …だからマフラーしなって言ったのに』

辰『首詰まんの苦手なの～。』

涼『分かってるけど、寒いなら元も子もないでしょう』

辰『たつや、難しい言葉わかんなぁい』

涼『 ……はあ、』

辰『あぁ、ごめんなさい、傘傘、寒いから、』

なんともイラッとする言い回しに
自然と距離を取ると、雪の下に晒された深澤

焦りながら、傘の半分を取り返そうと
先を赤くした白い手が俺の手を一瞬掴む

ヒヤッと重なったそれに体温を上げながら
そのまま握り返したいけど、人目もあるのでどうにか抑える

辰『ひー、さみー』

ふわふわな猫っ毛に舞い降りた雪が
キラキラと反射して俺を煽る

まぁ、振り払うくらい。

傘を持つ手と反対で髪を撫でると
ハラハラと落ちる雪

同じくらいの身長なのに、上目遣いになってるのは
急な俺の手に驚いて、肩をすぼめているせい

辰『ありがとぉ、』

涼『うん』

それにしても、俺の恋人は冬が良く似合う。

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