諦めの悪い奴 Kei.inoo

28.幸せが崩れる ページ28

貴方side






あの母の日から1ヶ月




雨の季節になった




ザーザー降りの雨の中店に来るのは1人だけ







慧「ヒカスペよろしくぅー！」


貴「光さんヒカスペ1つお願いします」





伊野尾さんは雨なのにもかかわらず仕事の合間を縫って必ずお店にやってくる




嬉しいけど大丈夫なのかな？





お兄ちゃんは最近仕事が忙しくて来ないし




本当に雨の中くるのこの人だけだ







知「よく雨の中毎日来れるね？」



慧「Aのためだよ」


涼「伊野ちゃん、Aちゃんの顔見てみ…」


慧「大丈夫！慧ちゃんはね！この顔すら愛おしく感じるほどAのことが好きなんだから！」






ドン引きする2人



心の中では嬉しいと思っているけど



そんなこと言ったら絶対調子に乗るに決まってる






でも毎日来てくれる伊野尾さんの笑顔を見るとなんだか元気になる


自然とお店の中が笑顔になる



そんな今がたまらなく幸せだった







でもそれは続かなかった







.








光「Aちゃん、大ちゃんから電話来てるけど、めっちゃ焦ってる感じだよ」




この電話が私の幸せな気持ちを一瞬にして崩す





光さんに言われて電話に出る





貴「お兄ちゃん？…」




大『あ、A！！母ちゃんが倒れた！早口病院来い！平成病院にいるから！』ブチッ





電話が切れた後私はフリーズした



お母さんが倒れた？





でもあんなに今日の朝は元気だったのに…



いつも通り"いってらっしゃい"って言ってたのに…





光「Aちゃん？どうしたの？大ちゃんなんて言ってた？」





私は光さんの言葉が聞こえた瞬間我が身に帰り





貴「お、お母さんが！倒れたんです！だから、病院行ってきます！…」




今にも溢れ出しそうな涙を必死にこらえる





光「ちょっAちゃん！？」




私は大雨の中傘もささずに走って病院に向かった








…








病院に着くと頭を抱えたお兄ちゃん





貴「お母さんは？」



大「今病室で寝てる…」






いつものあの幼い笑顔からは想像もできないくらい重い表情のお兄ちゃん






貴「先生は何て言ってた？」



大「癌だって…もう結構進行してて…治らないって…」






お兄ちゃんは涙を流した







私はお母さんがいる病室に向かう





病室に入ると




窓の外を静かに見るお母さんの姿






貴「お母さん！！」

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