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練習試合が終わり、相手の高校が体育館を後にする。次々とコート内が片付けられるその様子は祭りの後のようで、なんだかすこし寂しかった。その時、隣の嶋田さんがそれじゃ、と片手をあげる。
「俺、ちょっと弟子んとこ行ってくるわ」
「えっ」
「届くには手ぇ伸ばすしかないって、教えにいかなきゃな」
嶋田さんはそう言って歯を見せて笑った。私は慌ててぺこぺこと頭を下げる。思えば私のアウェイ感が無くなったのも、ルールを全く知らないバレーを楽しく観戦できたのも、嶋田さんのおかげだった。
「あ、あのっ!ありがとうございました!」
「うん、どういたしまして。リベロの彼女さん」
「皆川ですっ!皆川A、覚えてください!」
顔を真っ赤にしてそう言えば、嶋田さんは笑いながらごめんごめん、と返す。
「じゃ、皆川ちゃん。またいつか、観客席で会おう!」
「は、はいっ!」
嶋田さんが去っていき、私も部員さんにご挨拶をして帰らなければ、と荷物を持った瞬間。下から声をかけられた。
「皆川、ミーティング12時半まであるから外で待っててくれ!」
「へっ?は、はいっ!」
彼の勢いに呑まれて思わず返事をしてしまったが、それはつまりどういうことなのだろうか。去っていく西谷くんの背中を見つめながらばくばくと心臓を鳴らした。
ギャラリーから降りて体育館の外で時間を潰す。そこで、私は先ほどまでの接戦を思い出していた。
みんな、凄かった。そんな言葉じゃ言い表せないくらい。技術もそうだけど、なんたって、物事に向ける情熱が桁違いだ。
「……やっぱり、羨ましい」
私の中に燻るのは、羨望と、もう一つの想いだった。
___私も、あそこに行ってみたい。
「皆川っ!」
「うわっ」
「待たせてゴメン!着替えてくるからもうちょっと待っててくれ!」
考え事を断ち切るように、ミーティングを終えたらしい西谷くんが話しかけ、たったかと部室まで走って行った。いろいろ心臓に悪い人だなあと思いながら頬を抑えていると、後ろからぞろぞろとバレー部員が現れた。
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みな(プロフ) - 星流さん» コメントありがとうございます!恋愛小説で1番の褒め言葉だと思います…! (2020年8月12日 14時) (レス) id: 0cef88b6a2 (このIDを非表示/違反報告)
星流 - キュンキュン止まりません! (2020年8月11日 22時) (レス) id: a0acb0a3f9 (このIDを非表示/違反報告)
みな(プロフ) - ねぎ塩さん» 私にもったいないくらいの長文コメントありがとうございます…!本当に嬉しいです そのようなことを言ってもらえて二次創作やっててよかった…と改めて思えます モチベーションめちゃくちゃ上げてくださって本当にありがたいです…!これからも応援宜しくお願いします! (2020年7月25日 12時) (レス) id: 0cef88b6a2 (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ塩(プロフ) - 既にキュン死しすぎてお腹いっぱいです。一旦落ち着こう、と目次を見返すと、まだまだ山のようにお話があって、しかもシリーズ化している…!!!こんなに素敵な作品をまだまだ読めることが最高に幸せです、、、! (2020年7月25日 3時) (レス) id: b9a3808d09 (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ塩(プロフ) - なんど携帯を伏せて、ノヤっさん!!!すきーーー!!!と悶えたかわかりません。主人公の前では明るく何もないように振る舞っていても、裏では意識しまくってるとか、ほんと、しんどいです…。今14話まで読んだところなのですが→ (2020年7月25日 3時) (レス) id: b9a3808d09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みな | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/nymn624
作成日時:2020年2月13日 3時