クリエイターシンドローム

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正直、ここ最近、他愛もないことで
彼から連絡をもらう回数は多くなった。

もちろん、仕事の内容がほとんどの割合を占めるけど、
でもその中でほんの少し、少しだけ、
関係のない話題も見え隠れするようになった。

―最初は、コミュニケーションの一環だと思っていた。

彼はこのチームのサブリーダーでもあるし、
個性あるメンバーをまとめる均衡の立場でもある。
そういう立場だからこそ、
マネージャーの私とチームの仲介役として、
個別のコミュニケーションを業務的にとっているものだと。

でも、じゃあ、今の発言は―――？

年齢もキャリアも、彼らよりは少しばかり先輩だ。
それなりに恋愛も経験してきた。

自分の中にある疑惑が少しずつ核心に変わろうとする。
でも、土井谷君は頭が非常にきれる人だ。
ちょっと先輩をおちょくってやろう、って、
遊び的な単純なことかもしれない。

そんなことをぐるぐる頭で考えていると、

「あれ、まだ戻らないんですか」

飯野君の声が響いた。

「なかなか電話から戻ってこないから、
　上司にでも説教されているのかと思いましたよ」

「残念でした、ただの会社からの業務連絡よ」

相変わらず私には無表情で毒舌だけど、
以前よりも話しかけてくれることが多くなったから、
これでも随分進歩した方だと思う。

「Aさん」
「ん？」
「アメリカ、よろしくお願いしますね」

何、改まって！こちらこそ！

そう言って、飯野君の肩をポンと叩く。

―そうだね、大きな案件も控えているんだから、
　余計なこと考えないようにしないとね。

自分の中で言い聞かせながら、
私はその場を後にした。

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