お芋の没ネタ集

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変な奴に出会ったのは、夏頃だった。


突然伝えられた転校生の名前。

突然入ってきた転校生。




全てはここから、始まってしまったと思う。








「重岡大毅です！兵庫県から来ました！」








派手に、大きく、黒板に書いた字は

お世辞にも綺麗とは言えないレベルで。



静まり返った教室に、構わず"にかっ"と笑うそいつは、この世と思えないほどメンタル強男だと、認識する。








「じゃあ重岡の席は……」








どこまでも冷静な先生は、静まる教室内も気にすることなく、私の隣の席を指さした。








「瀬良の隣だな」








自分の席がわかると、そいつの行動は早かった。


40人近くいる狭い教室を、風が通ったのかと思うぐらい猛スピードで私の所へ寄り、その大きな手を差し出す。

"よろしく"の一言もなしに、まるで握手だけがその合図かのように無言で。









『……』


「……」







ああ、どうしよう。

みんなが見てる。

握手を求めるのもおかしいし、挨拶がないのもまた変だ。そして何より、無言の教室で、突然差し出された手を握り返すなどもっと変だ。








「はい、重岡座れー」








"じゃあ、瀬良、重岡の事よろしくな"

やっぱり教室内の空気なんてお構い無しの先生は、無責任にそう言うと、タイミングよく鳴ったチャイム。




私は、そいつの顔から目を逸らし、

"はい"と小さく呟いた。






ホームルーム前と同じく、いろんな人の話し声で重なり合う教室。

一向に差し出した手を下ろさないそいつに、多分、相当呆れながら








『隣の席として、よろしくね』







と、素っ気なく返した。

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