引き立て役の私だって主人公になりたいとか思ったけど夏終わるし諦めよう。

6.あの子だったら ページ6

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授業が始まっても、隣の席には小瀧さんが座ってて。

"違うとこ座らないんですか？"って聞けば、"移動する理由ないもん"ってノートを広げた。






『私の隣にいると、変な目で見られますよ』


「どういう意味？」


『何であんなイケメンの隣にブスがいるんだ、って』






"女子は怖いですから"


先生が言う言葉を大事だと思ってメモをする。

カラーペンを取りだし、そこに線を引いて目立たせて、最後の文字の隣には花を描いてみたり。






「俺は瀬良ちゃんのこと、ブスだとは思ってへんから」






授業中にも関わらず爆弾発言。

イケメンっていうか、美は容赦なく女の子を落とすような言葉、サラッと言うよなぁ。


慣れてるのかな、それとも、勘違いさせるだけさせといて振るため？






『あー……まあ、思うのは人それぞれですけどね。近くの女子と比べたら私なんて、』






とか、結局上辺だけ。


私の言葉はほとんど"本音"がない。

自分でもわかるぐらい出てくるのは嘘ばっかり。



本当は"引き立て役"なんてもう嫌なくせに。

本当は"主人公"になりたいくせに。



主人公は、可愛くなければ成り立たない。

そんなの、少女漫画を読みすぎた私には嫌なくらい理解してる。







「んー」


『何ですか』


「もうちょい化粧したらええんちゃう？」


『これ以上だとすっぴんとの差が大きくなるので遠慮しときます』


「なら昨日みたいな格好？」


『あれだけは勘弁です』






私も、あんな風に可愛ければな。


昨日友達だったあの子を見て、ため息。


あの子みたいだったら、昨日のような格好も恥ずかしくなく着れたのかな。

服が可哀想とか、お金の無駄とか、なかったのかな。



タンスの奥にしまったあの洋服。

やっぱり、思い出として残しておくのはまずかったかもしれない。







『帰ったら捨てるべきだ……』


「なにを？」


『思い出したくない過去です』


「闇深いなあ、瀬良ちゃん」

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