引き立て役の私だって主人公になりたいとか思ったけど夏終わるし諦めよう。

26.もう ページ26

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『っ、離してください！！』






ケーキ屋を出て、少し歩いたところで緩まっていた腕を引く。


するりと抜けた腕を自分で掴んで、"もう会えませんと言ったはずです"って、じっと小瀧さんを見つめた。






「これはたまたまやん」


『それでもっ、……会わない、イコールで話さないのはずです』


「そんな約束はした覚えないって」


『なら今約束してください』


「もう遅い」






ちゃんと理由を聞きたい。

心からの本音だろう。



でも、やっぱりどうしても理由は話したくなくて。

それは、私が引き立て役だってバレたくなくて。



それに、小瀧さんにはハルカがいる。

私は……きっと、2人の邪魔だろうから。






『理由は……教えられません』


「なら帰さんけど、ええの？」


『智洋も待ってるのに……最低ですね』


「最低なんはどっち」


『っ……』


「理由も教えてくれず、突然、もう会えないだなんて。なあ、俺なんかしたなら謝るから……」






違う、違うんだよ。

小瀧さんが謝ることじゃない。


私が……柄にもないことしたから、悪いんだ。






『違います……』


「……」


『小瀧さんが悪いんじゃないんです。だから、もう、会うのも話すのもやめにしませんか』


「だから、っ、なんで！」


『小瀧さんのためですよ！！！』







本当は嬉しかった。

小瀧さんっていう、美しい方に話しかけられて、友達って関係になれて、タピオカまで一緒に行けて。



でも、違う。

私の嬉しさは、小瀧さんを想う人達にとっては邪魔なだけで、私は、引き立て役をやめたい一心でそれを無視していた。




本当はやめられないよ。引き立て役なんて。

1回ついた役割なんて……簡単に、無くせるものじゃない。



無理だったんだ、最初っから。

引き立て役を卒業なんて。

夏終わるんだから、主役になりたいとか……元々諦めるべきだったんだ。






『小瀧さんだって、ハルカがいるじゃないですか。私なんかに構ってないで、隣にいてあげたらどうですか？』


「は、……ちょ、っ」


『私はもう、っ、婚約者がいるんで、』






精一杯作った笑顔はきっと、鏡で見たら下手くそなんだろうなってぼんやり思いながら、来た道を走って行った。

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