ストロベリーの香りが重岡くんだと知ったら、推しになった。

37.痛い ページ37

＊





『……え』







目を擦っても、何度瞬きしても、変わらない。

見えるのは黒髪くんと、女の子が仲良さそうに話してる姿。




なんで、どうして。

疑問ばかり浮かんで、"女の子が苦手"と言ってた流星くんの言葉が脳内でリピートされる。




苦手じゃなかったの？

私でさえも、あの距離……だめなのに。





よくわかんない気持ちが私を襲ってきて、胸がチクチクと痛み始める。

視線から外そうにも、なぜか外せなくて


その2人だけを、嫌なくらいじっと捉えるだけ。






『こ、たき、』


「ん？どうした？」


『こたき、』


「どうしたって、っ！」







私の違和感に感じた小瀧は、私と同じ方向を向くと、目の前に来て顔を小瀧のお腹に押し付けられた。


ぐ、っと力よく。

"あほ、なんで見んねん"って呟きながら。






「嫌なら後ろ向くなりなんなり、」


『無理だったの……』


「は、？」


『なんか、っ、無理、だった、っ』






苦しくて、痛くて。

よくわかんない感覚なの。



ねぇ、小瀧、幼なじみならわかるでしょ？







「何で泣きそうになってんねん、っ」


『わかんな、っ、い、』







どうして、って頭をグルグル回るの。

私とはあんな距離、許されなかったのに。


図々しいにも程がある願い。



先に黒髪くんを知ったのは、私なのに、私より距離が近くなるっておかしいよ。



私が同じクラスじゃないから悪いの？

もっと黒髪くんと一緒にいればよかったの？







『こた、っ、きっ、』


「ん、ここ出るで」


『でも、っ』


「もっと苦しくなりたいんか？」







顔を見上げると、ふ、って笑う小瀧。

首を横に何回か振ると、"せやんな？なら少し落ち着くためにも、ここでなあかんで"って私の腕を引いた。







『どこ、行くの？』


「んー屋上？」


『寒いよ、』


「我慢せぇ。またココア買ったるから」


『……うん、っ』






"泣くと素直になるんか？"ってその大きな手で、親指で、いつの間にか流れていた涙を拭う。


"わかんない、小瀧の前で泣いたの初めてだし"

自分でも涙を拭いながらそう言うと、"せやったな"って優しく頭を撫でてくれた。

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