ストロベリーの香りが重岡くんだと知ったら、推しになった。

32.苦手 S.side ページ32

＊





「シンデレラ役の佐藤です！よろしくね、重岡くん！」






他の役も決まると、本格的に劇の準備が始まった。


台本作り係、舞台係、衣装係と分かれて作業をして。

俺たち役を貰った人は、台本ができるまでお互いの仲を深めとけと放ったらかしにされた。



ちなみに流星は、なにかの役かと思えば舞台係へ行ったらしい。

流星も、これやってほしい！と役を頼まれてたらしいけど、俺が目立つようにって身を引いたとか。




意味わからへん。







『あ、……よ、よろ、……よろしく、』






そして、

考えてなかったけど、役になったら必然的にもシンデレラ役の子と話さなきゃいけなくて。


シンデレラ役って、もちろんみな一致で女の子やから……ああ、考えただけで息が出来んくなってくる。

前から来たシンデレラ役の佐藤さんは、ニコニコしながら俺に近寄って挨拶して




俺もなにか返さな、と思ったけど頭真っ白。

そのせいか、出した声は予想以上に小さかったし。

絶対なんやこいつって思われた。死にたい。







「意外だね、重岡くんが……」







なんや、その言葉は。

意外だね？それは、どういう意味？



暗いのに似合わないねって意味？

柄にあってないよって意味？






『あ、あぁ、まあ、流星が勝手に推薦して……流れで、こうなった、だけやから、』


「そっか。まぁ私も実は重岡くんが王子様役だったらいいなぁ……とは思ってたけどね」


『そ、そうなんや、へぇ……』







これは、なに？その目は、なに？

俺に何か期待してるような目。

なにか言わなあかん？場を盛り上げなあかん？



いやでも他の役の人は役の人で仲良さそうに話してるし……あぁ、流星、呑気に作業してへんで俺を助けて！







「重岡くんってさ、サッカー部だったよね？」


『さっ、サッカー部……です……』


「サッカー部の人って全員かっこいいよね！こう、いい感じに汗流して……輝いてる、っていうか！」


『そう、なんや、』


「たまに雰囲気で写真撮るんだけど、めっちゃよく映るの！あ、見せてあげる！」







ああ、なんで、何でこんな俺にグイグイ話しかけるん？

怖くて、早く逃げたいんやけど……。

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